好きになると、知りたくなる。
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映画と北海道をつなぐコラム「映画と握手」。
観た方歓迎、観てない方大歓迎!
新目七恵-text & Illustration
第3回

「南極料理人」

南極観測隊員の日常を描くコメディー映画『南極料理人』は、冬の網走湖や能取岬がロケ地となった。だけでなく、実体験を綴った原作者の西村淳さんが、留萌生まれの名寄育ちなのも、北海道に住む映画ファンとしては嬉しいところ。原作エッセイ(新潮社「面白南極料理人」など)からあふれ出る笑い(毒舌?)のセンスが、沖田修一監督独特のユーモアに置き換わり、淡々とした物語の中に、笑い・涙・驚き・狂気が詰まったエンターテインメント作品に仕上がっている。

主演の堺雅人ら出演陣のクセある演技は見応え十分。とはいえ、この映画の真の主役は、何といっても“料理”だろう。

たとえば、熱々の豚汁と一緒に頬張るおにぎり。
競うように取り合う中華料理の数々。
そして、インパクトが凄い「伊勢エビフライ」!

この「伊勢エビフライ」をどうしても食べたくて、レシピ本(文化出版局『ごはんにしよう。映画「南極料理人」のレシピ』)を参考に作ってみた。

大変だったのは、伊勢えびの入手である。近所の魚屋では手に入らず、本場・三重県南伊勢の魚問屋にネット注文。小ぶりの2尾が届いたのは、それから数週間後のことだ。
硬い殻に悪戦苦闘しながら下準備し、こんがり揚げたら完成。ガブッ…身が分厚い! エビ味噌を使ったタルタルソースも濃厚美味。こんな贅沢なフライ、もうお目にかかれないだろうなぁ…と思いつつ、“映画の味”をむしゃむしゃ味わったのだった。

さて、原作を読み返して、気づいたことがある。実は、原作者の西村さんが、南極では決して作らなかったメニューがあった。
それは、ざんぎ。北海道のソウルフードだ。
理由は「帰った後、愛妻料理で味わいたいから」(素敵!)。ところが映画には、から揚げが登場する。ある事情でふてくされた堺演じる「西村隊員」のため、仲間が作るのだ。

沖田監督は「西村隊員」を「料理で語る男にしよう」と思ったという。とすれば、劇中に登場した数々の料理、そして、あのから揚げに込められた“言葉”とは…。それを想うと、何とも心がじんわりする。


原作者の西村淳さんは、“食”に関する多彩な活動を展開中。その詳細は会社「オーロラキッチン」の公式サイトで確認できる。また、水&金曜日には、会社内のキッチンで特製ランチを提供(12:00~14:00)。本場・南極料理人の味が気になる方はぜひ。行く前にお問い合わせを。

●オーロラキッチン(札幌市中央区南10条西14丁目1-25GMSビル1階、TEL:011-211-1507)
WEBサイト

「南極料理人」2009年/沖田修一監督/出演・堺雅人ほか/125分

新目七恵(あらため・ななえ)
札幌在住の映画大好きライター。観るジャンルは雑食だが、最近はインド映画と清水宏作品がお気に入り。朝日新聞の情報紙「AFCプレミアムプレス」と農業専門誌「ニューカントリー」で映画コラムを連載中。

ZINE「映画と握手」
新目がお薦めの北海道ロケ作品や偏愛する映画を、オリジナルのイラストと文で紹介するA3四つ折りサイズの手作りミニ冊子。モノクロ版は、函館の市民映画館「シネマアイリス」、札幌の喫茶店「キノカフェ」、音更のカフェ「THE N3 CAFÉ」で随時配布中。

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