「ミュージアムグッズの魅力は何ですか?」と様々な場面で聞かれてきましたが、新型コロナウイルス蔓延以降、ミュージアムを応援し、実際に現地へ足を運ぶためのきっかけになる点が大きいように思います。気軽に出歩くことが難しい昨今、入館者の減少により経営面で窮地に立たされているミュージアムも少なくありません。こうした状況のもと、グッズという観点からミュージアムを応援することができると考えています。売上が直接的な支援に繋がらなくても、販売数が増加することで次年度の自治体等からの予算確保の根拠にもなり得ますし、何より購入することで伝わる「私たちはミュージアムの味方だ」という来館者からのメッセージは、携わるスタッフを勇気づけることでしょう。
これを読んでいる皆さんの地元にもミュージアムはありますか? もちろんそのミュージアムによって運営の状況は様々であるため、グッズを販売していないところも多いかもしれません。そこで私がオススメしているのが、展示を見ながら「私だったらどんなグッズを開発するだろう?」と考えながら展示を見て回ることです。
展示室内を見て回り、自分の心が動いた作品や資料を見つけます。そして、「私はなぜこの資料に惹かれたんだろう」「この作品の魅力をグッズで伝えるにはどうすればよいのか?」と考えてみます。そうするとより深く資料について学ぶきっかけになるし、作品を注意深く観察することに繋がります。グッズを通じて新しい観点で展示を鑑賞することになるのです。考えたらぜひSNSなどで紹介してほしいです。筆者もぜひ皆さんのアイデアを見てみたい!
また、グッズを通じて、普段行かないジャンルのミュージアムにも足を運ぶ機会になると良いと考えています。「美術館はよく行くけど自然史博物館はあんまり行かない」「普段は歴史系ばかりで、動物園は子どもの時以来行っていない」という方も多いかもしれません。興味深いグッズをきっかけに「ちょっと他のジャンルのミュージアムにも行ってみようかな」と思ってもらえたら嬉しいです。
筆者は日本全国を駆け回り、様々なミュージアムグッズを調査してきました。その中でも今回は北海道のミュージアムで購入できる、いまオススメの逸品を紹介します。総合博物館、美術館、文学館など多様なジャンルのグッズを挙げているので気軽に楽しんでほしいです。そして地元や近所のミュージアムのことを思い出し、次の休みにでもぜひ足を伸ばしてみてほしいですね。
釧路市立博物館:
石炭列車マスキングテープ(機関車、石炭車)/各500円(税込)
SNSで新発売の報を耳にし、心が躍りました。機関車と石炭列車の2種類があり、組み合わせて繋げて貼ると好きな編成の石炭列車が作れるという、ファン垂涎の工夫が施されたマスキングテープです。2019年の石炭列車廃止の時に試作したところ、地元の鉄道ファンに好評だったため、石炭列車の企画展にあわせて商品化したそう。車両のイラストは、産業史担当で鉄道好きの学芸員さんがチェック済み!
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄:
オリジナルトートバッグ「妙夢 MYOMU」/3,000円(税込)
美唄市にある野外彫刻美術館。閉校した美唄市立栄小学校跡地に、美唄市出身の彫刻家である安田侃の作品が配置されています。広い敷地内に40点以上の彫刻があり、家族連れで野外の作品を見て回るのも楽しい。お気に入りは《妙夢》のトートバッグ。安田侃のデッサンがデザインされています。筆者はアルテピアッツァに遊びに行って荷物が増えた時に買って、日常使いして楽しんでいます。
安田侃彫刻美術館アルテピアッツァ美唄オンライン販売
三浦綾子記念文学館:
はぐりら 森のミスト 30ml/2,200円(税込)
三浦綾子の名作『氷点』の舞台である外国樹種見本林に立つ、三浦綾子記念文学館。「文学館に来れば作品の世界をそのまま楽しめる!」と道内外から訪れる方も多いとか。そんな外国樹種見本林をイメージしたミストがおすすめ。アカエゾマツの香りがベースのスッキリとした香りで、部屋の中で振りかければまるで本当に林の中で深呼吸をしているみたい。持ち歩いてリフレッシュしたいときにマスクに振りかけるのも良いですね。
三浦綾子記念文学館オンライン販売
北海道立北方民族博物館:
モカシン制作キット/1,500円(税込)
北方地域の諸民族の文化や、関連する先史文化を学べる北海道立北方民族博物館。常設展示が大好きで、衣服のコーナーは食い入るように見てしまいます。新型コロナウイルス蔓延前に行われていた、館内での体験キットがミュージアムショップで販売されています。お気に入りはベビーサイズのモカシン。モカシンは足を包むように一枚の皮で縫われた靴。革と糸はキット内で用意されているので、自宅でも簡単にチャレンジできますね。
札幌オリンピックミュージアム:
輪ゴム/500円(税込)
道産子には身近なウィンタースポーツ。筆者はスピードスケートとアイスホッケーの経験者です。札幌オリンピックミュージアムでは、冬季オリンピックやパラリンピックの魅力を発信し、ウィンタースポーツの普及・啓発活動をしています。おすすめはこちら。オリンピックマークを想起させる箱の中に、5色の輪ゴムが!「そういえばこの間札幌オリンピックミュージアムに行ってね…」と、友人に気軽なお土産として渡すのにもぴったり。
photo by Misato Kan
大澤夏美(おおさわ・なつみ)
1987年生まれ。札幌市立大学でメディアデザインを学ぶ。在学中に博物館学に興味を持ち、卒業制作もミュージアムグッズがテーマ。北海道大学大学院文学研究科(当時)に進学し、博物館経営論の観点からミュージアムグッズを研究し修士課程を修了。会社員を経てミュージアムグッズ愛好家としての活動を始める。現在も「博物館体験」「博物館活動」の観点から、ミュージアムグッズの役割を広めている。