北海道で「鉄のまち」といえば、室蘭。特に輪西町は、新日本製鐵(現・新日鐵住金)の門前町として栄え、最盛期の1965(昭和40)年代は2万人が暮らす道内トップクラスの過密地域だった。鉄鋼マンたちは朝方、昼方、夜方と3交替で働き、不夜城のごとく眠らないまちだった。やがて鉄鋼の生産量が徐々に減り、人口が流出。2004(平成16)年、危機感を抱いた輪西商店街の若手経営者らが中心となり「鉄をまちおこしに活用しよう」と結成したのがNPO法人テツプロ(旧てつのまちぷろじぇくと)である。
鉄に親しむイベント開催やボルトやナットを組み合わせた人形「ボルタ」の製造販売などで「ものづくり室蘭」を世に広くアピールしてきた。そのテツプロが運営する輪西八条アトリエで本格的な「鉄のものづくり体験」ができると聞き、さっそく予約を入れた。指導してくれるのは工業デザイナーの須藤大介さん。10年前に製陶会社を退職し、故郷の室蘭に戻ってデザイン会社を起ち上げ、テツプロの活動に参加するようになった。
2年前の夏休み、室蘭周辺の小学生を対象に「輪西ものづくり工房」を開いたら、親たちも目を輝かせた。元鉄鋼マンが「孫に室蘭らしい体験をさせたい」と広め、遠方から帰省してきた家族連れも増え、7、8月の週末だけで120人の参加者が集まった。「実際に体験すると、子どもだけでなく大人も興奮します。室蘭はものづくりで発展したまちなので、その精神を語り継ぎたい。このアトリエで、鉄のまち室蘭の成り立ちを学ぶセミナーを開き、作った鉄製品の販売も始めたい」と抱負を語る。室蘭ならではの「てついく(鉄育)」がいま、期待されている。
「コークスは石炭を蒸し焼きしたもの。炭のように高温で燃え続けるので、製鉄所には欠かせない熱源。だから、コークスも室蘭でつくる。鉄鉱石は、コークスで熱すると溶け、石灰石に反応することで不純物が取り除かれ、鉄だけが供出されます」と製鉄の基本を解説しながら、工具の使い方や作業の手順、鉄の温度の見分け方など、丁寧にレクチャーしてくれる。「さぁ、ちょうどいい温度。この中に鉄の丸棒を入れて」。さて、どんな鉄のキーホルダーができるかな。
●キーホルダーづくり1200円 ●マグネットづくり2000円
対象/小学生以上(保護者が付き添えば4、5歳でも可)
体験日/土・日曜日、祝日<要予約> ※平日希望の方はお問い合わせください。
体験時間/10:00~16:00
製作時間/約60分
北海道室蘭市輪西町2丁目3-10
TEL:0143-84-5510ノールドデザイン
WEBサイト
●ボルタ製作体験2160円(外国人旅行者・留学生は不可)
体験用ポーズの見本を見ながら手・足のパーツを製作し、ハンダによる組立を行います。
対象/小学4年生以上(小学生は保護者の付き添いが必要)
●工場模型製作体験1600円
室蘭の工場をイメージしたモデルを参考に、自由な発想でプラスチックのケースにボルトやナットなどを両面テープで貼り付けます。
対象/小学1年生以上(小学生は保護者の付き添いが必要)
体験時間/10:00~・13:00~・15:00<1週間前に要予約>
製作時間/40~60分
定休日/11~4月は日・月曜日、5~10月は月曜日
北海道室蘭市輪西町1丁目32-6
TEL:0143-47-8233
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