創成川公園のシンフォニー。

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2012年に行われた創成川公園3Dプロジェクションマッピング。たゆたう流れに、光と音が交差する

テレビ塔のたもと、2011年春に誕生した「創成川公園」。幅30m、全長820m。大通公園の約半分という小さな公園だが、緑とアートに彩られ、歴史を抱く散策スポットだ。朝、昼、夜…と歩いてみると、実ににぎやか。豊かな“音”に満ちている。
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見上げれば、快晴の青。なんだか空が広く感じるのは、ビル街を貫く川と公園のおかげだろう。
朝の創成川公園を訪れたのは、昨年秋のこと。通勤中の会社員。ひっきりなしに走る車。都心のど真ん中だけに、せわしない気配に包まれている。
ところが、公園の川辺に降りてみると、あら不思議。さらさら、ざぁざぁ、ちゃぽちゃぽ。せせらぎはぐっと近くなり、街の雑踏がまるでBGMのようだ。のんびりいこうよ。川のささやきに誘われて、気楽な気持ちで歩き出す。

狸二条広場の先、公園の南端で飛び石を発見。ぴょんぴょん跳ねて、川を渡るのが楽しい

創成川公園は、創成川通に2カ所あった地下トンネルをつなぐ、アンダーパス連続化事業によって生まれた。交通混雑の解消に加え、目指したのは、歴史をデザインに取り入れた親水空間だ。
歴史とは何か。そもそも創成川は、1866年、幕府から派遣された大友亀太郎が、米作のための用水路として開削した「大友掘」がルーツ。のちに幅を広げて運河となり、建築資材や食料を運び、札幌のまちづくりを支えたのだ。
公園の中央、南1条ブロックにある「開拓の広場」は、そうした足跡を伝える場だ。レンガ造りの休憩所には写真が刻まれ、傍らには大友亀太郎像が鎮座する。

「人の一生は金銀財宝に富めるにあらず、積善の道に如かず」の信念を貫き、札幌開拓の先駆者となった大友亀太郎像

ちなみに、公園化される前、この河畔は柳が茂って暗く、車道でまったく近寄れなかった。ところが実は、昭和半ば頃までは、サーカスや歳の市が行われていたそう。整備されることで、再びにぎわいを取り戻したというわけだ。山あり谷ありの歩みを知ると、復元された創成橋もどこか嬉しそう。朝日に輝く公園に、過去と現在が明るく響き合う。

1910年に築かれた石造りアーチ橋をもとに復元された創成橋。
1世紀以上前とは思えないほどモダンなデザイン

枯れ葉の舞う秋、散策路に花はない。代わりに目に留まるのが、草花や樹木の名札だ。ポカホンタス、メヌエット、アグネススミス…。初夏に咲くライラックだけでも、種類の多さにびっくり。春はキタコブシ、秋にはヤマモミジ。創成川公園の歳時記は、話題に事欠かない。
点在するアート作品も魅力的だ。美唄出身の彫刻家・安田侃さん、ランドスケープアーティストの団塚栄喜さん。2人の作品計17点を探すだけでも、時間があっという間に過ぎていく。

安田侃さんの「天秘」。創成川公園の南2条ブロック、右岸と左岸に対になるように配置されている

大通との交点にある「まんなか広場」には、直径約20mの白い円を、川をまたいで架けた「スノーリング」がある。彫刻家・西野康造さんの作品だ。札幌都市軸の原点「0(ゼロ)」を示しているこの作品は、上を自由に歩けるのがユニーク。
昼過ぎ、そこを通りかかると、楽しげに走り回る子どもたちの姿があった。キャッキャという大歓声。こちらまで愉快な気分になってくる。

札幌の東西南北を結ぶシンボル「スノーリング」。歩いても、遠くから眺めても開放的(撮影:伊田行孝)

夜、ひっそり静まり返った創成川公園を歩いたのは、雪深い冬の日だった。
街灯りを照らす雪道が美しい。北一条通で信号待ちをしていたら、カァーン、カァーンと、鐘の音が聴こえてきた。…時計台だ。郷愁を誘う音色が、何とも懐かしい。
二条市場まで歩くと、のれん横丁の赤提灯がともっている。その先には、クラフトビールが味わえるパブ「月と太陽BREWING」もある。どこに入ろうか迷っていたところ、知り合いにばったり。
彼に連れて行ってもらったのは、二条市場の北側向かい、M’s East1階にあるスペインバルの店「ロメオ」。カウンターだけの洒落た店内で、黒こしょうの効いたナポリタンを頬張る。店主の江良麻衣子さんが、常連さんと交わす気安い会話が心地よい。そういえば、二条市場界隈には、明治期から居酒屋があったとか。変わらぬ人の営み(愚かさ?)を、川はどんな思いで見つめているのだろう。

もうすぐ雪解け。春になったら、草木が芽吹くだろう。川音は元気に響くはずだ。雪に埋もれていたアート作品も、目を覚ますに違いない。創成川公園の、新しいシンフォニーが幕を開ける。

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