歩いてみたら、出会えた、見つけた。

気になる人

鉄道好きなら会っておきたい人

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その情熱は臨時列車を走らせた

創作キッチン「たまさぶろう」志々見 敦さん

志々見敦(ししみ・あつし)さんは関西の旅館や料亭で修業した料理人である。メニューを見ると、もち米をつなぎにした煮込みハンバーグやラザニア風うどんなど、地元の食材を生かしたアイデアにあふれている。どれを食べても納得、その腕前は確かだ。生まれ故郷の名寄で、畑の真ん中に創作キッチン「たまさぶろう」を開いたのは2007年。旧農家宅を改造した店内には、懐かしの鉄道写真をはじめ、サボ(行先表示板)、臨時夜行列車「スターライト利尻」や快速「なよろ」のヘッドマークなどが並べられている。

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「休憩時間や買い物ついでに、カメラを持って店を飛び出す」と、志々見 敦さん

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煮込みもち米ハンバーグ定食 900円

4歳まで過ごした幌延町から、祖父母が暮らす名寄には列車でよく遊びに来ていた。小学校に上がる前から線路や列車の音が好きな少年で、父の転勤がきっかけで兵庫県に移り住んでも、夏休みは乗り鉄三昧。北海道に帰省するときも、ほぼ夜行列車を利用し、周遊券を使って道内各地の鉄路を乗りつぶした。しかし、高校卒業後、飲食店などでバイトをし、料理の道に進んでからは“鉄ちゃん”を封印した。名寄での独立後、友人から撮影に誘われ、若き日々がよみがえっていくのを自覚した。ランチタイムが終わると、時間があれば夕方の開店時間まで志々見さんは撮り鉄になる。

【宗谷本線フォトギャラリー】撮影:志々見 敦さん

 
志々見さんがすごいのは、道北観光を楽しむ臨時列車「スターライトすばる号」を運行させてしまう行動力だ。最初に企画したのは2010年9月、名寄~南稚内間に臨時列車を走らせ、美深、音威子府、中川、幌延の各駅に停車し、各市町村の特産品を乗客にPRするというイベントだ。JR北海道旭川支店に何度も通い、単身で粘り強く交渉した。翌年も運行し、2012年には音威子府駅開駅100周年記念のイベントに協力。2014年には臨時夜行列車「スターライト利尻」を旭川~稚内間を走らせ、利尻島めぐりの旅も実現させた。こんどはどんなイベントを企画してくれるだろうか。楽しみでならない。

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隣の倉庫は運転が楽しめる「鉄道模型館」

●創作キッチン「たまさぶろう」
営業時間
ランチ11:30~14:00(ラストオーダー13:30)
ディナー17:00~21:00(ラストオーダー20:00)
「鉄道模型館」
営業時間/14:00~17:00
定休日/毎週火曜日・第2水曜日
北海道名寄市字砺波626番地1  TEL:01654-2-0507
WEBサイト
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消えた深名線跡に駅を復活させた

田舎食堂&旅人宿「天塩弥生駅」富岡達彦さん・由起子さん

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妻の由起子さんが駅長、達彦さんは首席助役

鉄道の運転士に憧れる人は多いが「幼少のころから車掌になりたかった」人は珍しい。列車に乗ると必ず後部に向かい、車掌と話す機会をうかがうような少年だった。炭鉱まち三笠市で生まれた富岡達彦さんにとって鉄道は原風景。迷うことなく旧国鉄に入社し、京王電鉄と合わせて15年間、お客様と接するのが好きな鉄道員として働いた。その後、下川町の森林組合に転職するが「廃線跡に木造駅舎を復元し、鉄路の歴史を伝える仕事をしたい」という夢を実現するため、名寄に移り住み、今年3月、旧深名線の天塩弥生駅跡に民宿をオープンした。

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ユニークなアナウンスが評判の車掌さんだった

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領収書の代わりに渡される硬券

玄関引き戸に見つけた「〇〇参上」の悪戯書き、宿代を前払いすると切符箱から硬券を渡され、一気にテンションが上がる。待合室のような食堂には天塩弥生駅で実際に使われていた木製ベンチをはじめ、駅名板や合図灯など、道内各地の廃線駅や国鉄OB、鉄道ファンから譲り受けた品々で埋め尽くされている。客室は、寝台列車気分で泊まれる二段ベッド部屋と和室の3部屋。「名寄本線が廃線になって30年近く、深名線も消えて20年が過ぎ、みんな鉄道があったことすら忘れていく。ここに駅舎を建てたことで、かつての鉄道員が、駅を利用した人が昔話をしに来てくれる。それを語り継ぐのが、この宿の役目」という。

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昭和のたたずまいを再現した木造駅舎


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置かれているひとつひとつに物語がある

たとえば1937(昭和12)年の開業当初、駅名は「初茶志内(はっちゃしない)」だった。その時代を知る人の話では、深名線が全通するまで、終点だったこの駅に転車台があったとか。これは達彦さんも初耳の話だ。名寄生まれの由起子さんは、亡くなった父も弟も旧国鉄に勤務していた。民宿を始めることに、賛成でしたか? と聞くと、少し間をおいて「昔の鉄道の良さを伝えることは、父の遺言みたいなものだから…」と笑った。かつてこの地は保線の拠点であり、国鉄官舎が23世帯もあった。この宿で過ごすうちに、なんだか線路も復活しそうな気がしてきた。

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地元産の食材をふんだんに使った由起子さんの手料理


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志々見さんや仲間と一緒に鉄道用電柱「ハエタタキ」を7本立てた

●田舎食堂&旅人宿「天塩弥生駅」
<食堂>
音威子府かけそば定食800円 咲来かけそば定食800円
営業時間/ランチ11:00~14:00
<宿泊>
素泊3500円 1泊朝食付き4300円 1泊夕食付4700円 1泊2食付5500円
定休日/不定休
北海道名寄市字弥生166-4  TEL:090-8898-0397 FAX:01654-3-8413
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鉄道の歴史

宗谷本線/1903(明治36)年「天塩線」旭川~名寄間開通、1912(大正元)年「宗谷線」と改称、名寄~音威子府間開通、1928(昭和3)年旭川~稚内港間全通、2年後「宗谷本線」へ

名寄本線/1921(大正10)年名寄~遠軽間全通、1989(平成元)年廃線

深名線/1924(大正13)年「雨龍線」深川~多度志間開業、1937(昭和12)年「名雨線」初茶志内~名寄間開業、1941(昭和16)年「深名線」深川~名寄間全通 1995(平成7)年廃線

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