北海道を新しい構図から見てみよう
ジャーナリズムから地質学まで、僕たちがいまの世界を理解していくにはたくさんの方法がある。どれがいちばんスリリングだろう。未来に向けて意識したいのは、まず時間のスケールだ。ジャーナリズムの単位は一日で、地質学のそれは、1万年から数億年。北海道マガジン「カイ」はこの夏、北海道と関わる時間と空間の単位を大きく拡張してみたい。そこからきっと、いままで知らなかった北海道が姿をあらわすだろう。そのために活かしたい枠組みが、「ジオパーク」だ。
ジオパークとはなにか——。
ジオとは、ジオグラフィ(地理学)やジオロジー(地質学)のジオ。地球や大地を意味する接頭語だ。火山や地形や地層、あるいは河川や湖、そしてそこにあるたくさんの生きものたちの営み。これらを丸ごと見渡すことができるのがジオパークという「大地の公園」。ジオパークとは、地球の巨大な営みや、活動している地球そのものがリアルに感じられる場所だ。ジオパークを歩けば、日常とはまったくちがう視点から北海道や日本列島の成り立ちをとらえることができる。そこで出会うのは、いままで気づかなかった地域の豊かさや、特段にユニークな個性だ。
谷口雅春─text
ジオパークの目的と種類
ジオパークには、日本ジオパークと世界ジオパークがある。日本ジオパーク委員会から認定された日本のジオパークは現在(2016.7月)39カ所で、北海道には5カ所。世界遺産と同じくユネスコの正式事業である「世界ジオパークネットワーク」(世界120地域で構成)に加盟が認められたジオパークが「世界ジオパーク」で、日本のジオパークではこれが8カ所。北海道では「洞爺湖有珠山ジオパーク」と「アポイ岳ジオパーク」が世界ジオパークネットワークに加盟している。
ジオパークでは、地域固有の大地の特徴的なありさまを保護して研究しながら、同時にそれらを教育や防災、そして観光の資源としてとらえ直していく取り組みが行われている。
「世界遺産」が自然保護を主目的としているのに対して、ジオパークは保護と活用の両方を重視していることに特色がある。だからジオパークには、見どころ(ジオサイト)を強調するために動線や解説パネルなどにさまざまな工夫がされている。またジオパークの認定にあたっては、国内外のネットワークとも、そこで営まれている地域ならではの活動や仕組みづくりが重視されている。