―参加者のニーズは?
小島 コープさっぽろのイメージもあって、やはり「食」の内容を期待される方は多いと感じます。コープさっぽろ主催の「畑でレストラン」は、キッチンカーを畑に持って行き、その農園の野菜などを有名シェフが調理して提供する企画です。
最初の頃は、場所によっては集客が難しい農園もありましたが、6年目を迎える今年は、GW明けに日程を発表したところ、20ツアーが2週間くらいでほぼ売れてしまう人気ぶりです。リピーター率が高く、何カ所かまとめて予約する方もいますし、男性の参加者も増えています。コープさっぽろが北海道の第一次産業と深く関わってきたからできる企画なのだと思います。
山内 私たちは、「北海道遺産」のツアーを長年続けています。“幻の橋”と呼ばれる、上士幌町の「タウシュベツ川橋梁」は人気ツアーのひとつですが、場所が奥地なのでバスを降りてからけっこう歩きます。そこで、今年は「ウォーキング」もテーマにして、タウシュベツ川橋梁の翌日に廃線を歩く行程も加えてみました。そうすると、遺産ファンに加え、ウォーキング愛好者にも参加していただくことができたのです。切り口を変えると、「北海道遺産」のツアーもまだまだ広がると気づきました。
―今後やってみたいプランは?
山内 「北海道遺産」のツアーは継続しますが、なるべく地元の人にガイドをしてもらう形でツアーを組みたいと思っています。私たち添乗員が話すより、地元の人にガイドをしてもらったほうが、お客さんの反応がとてもいいのです。地元の人と接して何かをつくる「体験」メニューも人気があります。アイヌの歴史も聞くだけではなく、自分でアイヌ文様を彫ったりすると、さらに身近に感じられます。「またその人に会いたい」とリピーターになってもらえますから。
小島 すでにスタートしているプランですが、「コープゆったり旅」を広げていきたいと考えています。車椅子の方、ゆっくり歩きたい方が旅行を楽しめるように、リフト付きのバスで、ゆとりをもった行程を組み、宿泊もバリアフリーのホテルを選んでいます。車椅子の方には「旅サポーター」が同行するので、ご家族も安心して一緒に旅を楽しんでいただけます。
あるツアーでは、同行したご家族が、「また、おばあちゃんと旅ができるとは思わなかった」と喜んでいたのを見て、このツアーは継続していかなくてはと強く思いました。観光施設やホテルにも協力をお願いして、「バリアフリーといえばコープトラベル」と言われるくらいに、企画内容を充実させていければと思います。
山内 とてもいい企画ですね。バスツアーはシニア世代の需要が高いので、これからの意義あるモデルケースになりそうです。私たちは、北海道、地域にこだわった企画商品をもっと提案していきたい。自治体からの要望やアイデアをバスツアーという形にして発信する。もしそれがうまくいって、ほかの旅行会社からもバスが出るようになれば、地域が活気づきます。そこを目指していきたいですね。
―バスツアーを担当する魅力は?
小島 企画から添乗まですべて関わるので、バスを降りるときに「また来たい」と言ってもらえるとやはりうれしいですね。次のツアーを考える励みになります。最近は、お客さんの情報収集力がすごいので、ツアーに求める声を直に聞いて、参考にしながら、楽しい時間を提供できればと思います。
山内 今だから言えることですが。私は初めてバスに添乗した時は、なるべくお客さんに話しかけられないようにしていました(笑)。そして1年後に、たまたま同じお客さんがバスに乗っていて、「添乗員さん、去年よりずいぶんうまくなったよ」と言ってくれたのです。認められたことがうれしくて、「これはいい仕事だ」と実感しました。旅行業は「平和な事業」ですよね。参加者の行きたいと思うところへ行って、その反応や喜ぶ顔を見ながら仕事ができる。そこが魅力だと思っています。
小島 そういえば、「ゆったり旅」に参加された方が、現地に着いたら「車椅子を使わない」と言うのです。旅行に来たら元気になったので、歩けるところは歩くと。結局、4日間ずっと車椅子を使わずに旅を楽しんでおられました。山内さんの言う「平和な事業」を私も目指していければと思います。