明治時代に計画された殖民区画の名残として、開拓の進展によって地上に姿を現した「格子状防風林」
根釧台地を空から見下ろすと、格子模様の巨大な防風林が広がっています。
宇宙からも見ることのできるこの防風林は、明治時代に殖民区画として設定されたもので、原生林を切り開き、原野を開墾するとともに、農地や人々の生活を守るために180m幅の林帯を3,300m間隔で配置したもので、中標津町、標津町、別海町、標茶町にまたがり、最長直線距離は約27km、総延長は約648kmにもなります。
平成13年には「根釧台地の格子状防風林」として北海道遺産にも選定された、雄大な酪農景観のシンボルです。
この防風林の歴史や役割などを整理すると、次のようになります。
- 開拓顧問のホーレス・ケプロンらが提唱した区画法に基づき、北海道では碁盤の目状に農地や道路、防風林が整備された。
- かつては北海道の他の地域にも設けられたが、どんどん減少した。
- 根釧原野に残る防風林は日本最大規模。
- 防風林は風害による農作物の乾燥や倒伏を防ぐほか、夏には霧を消す効果、冬は風害を受け止め道路の見通しを確保するという役割もある。時に人命を奪うような冬の嵐が発生する根釧台地では、今も防風林は生活に欠かせないものとなっている。
- 格子状防風林の面積は1万5708ヘクタールで、約6割が国有林。その50%が、冬になると葉を落とすカラマツで、1年中緑色の葉を持つトドマツや、アカエゾマツは全体の26%。自然そのままの林は19%となっている。
- 現在、カラマツの伐採跡には、生物多様性の観点から、郷土樹種のアカエゾマツやトドマツが植えられるようになってきている。
- カラマツは、寒冷地でも成長が早く、安価で大量に手に入るということで長野県から持ち込まれた。また、当時は炭鉱の坑木としての需要もあった。
- カラマツは枝が落ちてしまうため、酪農家は春になるとまず牧草地に落ちている枝を拾わなければならない。大変な作業だが、これをしないと機械に絡まってしまう。しかも防風林の影になる部分は作物の育ちが悪くなり、ある意味邪魔な存在でもあるのだが、風の影響を受けやすい牧草やデントコーンなどにおいては防風林の効果は非常に大きい。
- 開拓が進み、周囲が牧草地になっても、防風林があることで開拓する前の気候に近い状態を保っている。
- 防風林は動物たちの棲家や移動経路でもあり、生態系維持にも役立っている。