土地の結晶として

北海道固有の民俗芸能といえばアイヌの人々による古式舞踊が思い起こされますが、今回は、和人が母村から持ち込んだ民俗芸能、あるいは移住後にその土地で生まれた民俗芸能をご紹介します。

日本の各地に民俗芸能は伝わっていますが、その多くは毎日のように目にするものではなく、また地域やまちの人たちすべてが参加するものでもありません。
しかし、そこに根を張り生きた人々の証であり、土地の結晶ともいえます。
北海道においては「母村」という源流をもつ民俗芸能が数多くあります。中でも多いのが富山県から持ち込まれた獅子舞です。母村から北海道へ渡り、その土地で最初に舞った人々と、それを見た人々の望郷の念、明日への希望と不安はいかほどだったのでしょうか。そして、そこから途切れることなく伝え続けてきた「ここに生きた人々」の思いや行動が、土地の風習と文化の礎となりました。

一方で、多くの土地で伝承活動に課題を抱えています。継承者の不足に加え、このコロナ禍による神事や祭りの中断・中止も少なからず影響を与えているようです。ある地区に伝わる郷土の芸能は小学校の学習内容になっていましたが、児童数の減少によって小学校が統廃合されることで、芸能の学習が別の内容に切り替えられたそうです。
それぞれの努力だけでは伝承にも限りがあります。自治体による多様なバックアップや、土地の成り立ちや歴史へ目を向ける意識も大切になっていくのではないでしょうか。

伊田行孝─text 松井久幸─photo
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