キーワードで歩く創成東

旅人は、ゲストハウスを目指す。

共有スペースのリビング。スタッフ手作りの、札幌軟石が埋め込まれた壁がアクセント

最近、「ゲストハウス」という言葉をよく聞くようになったが、ゲストハウスってなに?という人も少なくない。ホテルや旅館とどう違うのか、ゲストハウスとは、いったいどういうところなのか。さっそく、創成東に誕生したばかりのゲストハウス「雪結(yuyu)」に泊まってみた。
柴田美幸-text&photo

二条市場から東へ進むと、北海道神宮頓宮、そして北海寺というお寺が見えてくる。寺の手前の道を南へ入れば、マンションが立ち並ぶ住宅街。その中にたたずむのが、本日の宿となるゲストハウス「雪結(yuyu)」だ。木をふんだんに使った外観が特徴的で、中からオレンジ色の暖かなあかりがもれている。氷点下の寒さの中たどり着いたこともあって、ホッとした気持ちになった。

建物は、築40年のアパートを柱と外壁だけ残して改築。札幌の魅力である「雪」と、人と人をつなぐ「結」で「雪結(yuyu)」と命名された


内装にも木がふんだんに使われ、ぬくもりを感じる

ゲストハウスは、安価な素泊まりの宿泊施設として、特に海外からの旅行者に利用されることが多い。札幌では4〜5年前からすすきのや中島公園エリアで数が増えているが、2016年8月、創成東エリアにもついに誕生した。
経営するのは、雪結マネージャーを務める木村高志さんを含めた20代の若者3人。先にオープンした豊平川近隣の「WAYA」というゲストハウスは、国内外の旅人が集まる宿になった。2軒目の地に選んだのが創成東だ。都心に近いのに宿泊施設が少ない空白地帯であり、なにより以前からこのエリアに興味があったと、木村さんは話す。「創成東は、個性的な店や人が集まっていて、違う価値観が交わる場所。若者にも何かできるという可能性にあふれた地域だと感じました」

近くの二条市場周辺や創成川沿いには、昔ながらの店に混じって、
カフェやビアバーなど個性的な小規模飲食店が多く立ち並ぶ


たんに宿泊施設をつくるのではなく、商店街のお祭りに積極的に参加するなど、まず地域と深く関わるのが彼らのスタイルだ。木村さんは「地域へのコミット」が重要だと言う。「自分たちが地域の人に受け入れられると、『雪結に泊まっている人だ』と、ゲスト(旅人)も受け入れられていく。この地域での暮らしを感じるような体験ができることは、札幌のまちそのものの魅力について提案することにつながる、と思うんです」
旅人がまちを訪れたとき、最初にまちの人と蜜なコミュニケーションがとれる場所が宿だろう。海外からの旅人なら、なおさらだ。「宿の役割は、まちの入り口であること」と、木村さんたちは考えている。ゲストハウスは、地域を通じてまちと深くつながり、関わる場所としてある。創成東という地域に根付くことは、旅人が札幌のまちと深く関われる場づくりでもあるのだ。

多くのゲストハウスのように、英語の話せるスタッフがそろう


近隣の飲食店を紹介したボードは、地域の店へ足を運んでもらう工夫


ゲストハウスの最大の醍醐味は、旅人同士が一つのテーブルを囲んで交流できるところだろう。訪れた日は、タイからの旅行者を囲んでたこ焼きパーティーが開催された。参加は自由だ。かなりアヤシイ英語と身振り手振りで、なんとかコミュニケーション。よくわからなくても、なんだか楽しい。
しかし、旅慣れない人にとっては勇気がいることだったり、自分の時間を大事にしたい人もいる。雪結は、自分のペースで旅を楽しみたい人がゆっくり過ごせる宿をコンセプトに、名付けて「冒険準備系女子」という女性の旅人をイメージしているそう。カフェ風のリビングや、かわいらしいカーテンのかかったベッドルームは女子好きしそうな雰囲気だ。女性専用のシャワールームも完備し、全体的に清潔感があって好感が持てる。

タイからの旅行者とたこ焼きパーティー。「Tabi Tomo Hokkaido(たびとも ほっかいどう)」という、国際交流を目的とした北海道旅行の企画も行っており、雪結が拠点になっている


スタッフと旅人がともに楽しむ。英語ができなくても、スタッフが助けてくれる


ゆっくり過ごしたい人は、2階にあるライブラリーがおすすめ



この日泊まった女性専用のドミトリー(2段ベッドの相部屋)。各ベッドを仕切るカーテンは、根室出身の版画家・橘内貴美子さんデザインのオリジナルで、キタキツネやエゾシカなど北海道の動物がプリントされている。制作のワークショップには地域の人も参加した

「ホテルや旅館のように、なにもかも揃っているわけではないけれど、泊まってみれば感じられることがあるはず。宿泊だけではない場所としてゲストハウスはある」と木村さん。札幌に住んでいる人も、時々泊まりにくるという。
朝、宿を出て札幌のまちを眺める。見慣れた景色が少し違って見えるから不思議だ。ゲストハウスは、旅人と生活者、両方の視点でまちを知ることができる特別な場所だと感じた。

ゲストハウスを立ち上げた、ステイリンクの木村高志さん(左)、河嶋峻さん(中央)、柴田涼平さん(右)。3人は大学卒業後すぐに起業した

●ゲストハウス雪結(yuyu)
北海道札幌市中央区南3条東4丁目3-13
TEL:011-522-7660
料金(1泊1名) ドミトリー(2段ベッドの相部屋)2600円〜、個室(和室・洋室 2名以上)3500円〜
チェックイン/16:00〜22:00
チェックアウト/11:00
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