アイヌの歴史と文化という北海道の誇り

日高山脈北部を源流とする沙流川。流域には多くのアイヌ語地名が残り、支流からは先史時代の石器も出土しています。この川と両岸に広がる森は太古から人の営みを支えてきました。平取町二風谷はその中流に位置します。

明治から本格的な和人による開拓がはじまった北海道には「歴史・文化ツーリズム」は馴染まないと誤解されることがありますが、ここには長いアイヌの歴史があります。それは北海道が誇る宝物です。今年4月、白老町のポロト湖畔にウポポイ(民族共生象徴空間)が誕生します。東京オリンピック・パラリンピックの開催を機に、海外からも多くの方々がウポポイに足を運ぶことが予想されます。
白老から少し足を延ばせば、アイヌ文化が色濃く残る平取町です。二風谷地区は北海道で唯一の伝統的工芸品「二風谷イタとアットウ」の産地であり、今も作家の方々がアイヌ文様を彫り、刺繍をし、アットウを織っています。
また、アイヌ文化のうえに和人による開拓の風景が重なった平取の「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」はこれも北海道で一つの重要文化的景観に選定されています。

その二風谷に昨年「二風谷コタン」が誕生しました。「二風谷アイヌ文化博物館」前の空間を歴史と文化の拠点として整備したのです。伝統的な工法で造られたチセ(家)の合間を小川が流れ、空間内の工芸館では本物の工芸品を購入することもできます。作家の方々の工房が連なる「匠の道」ともつながっています。

今回は「二風谷コタン」から歩きはじめるアイヌの歴史・文化のツーリズム特集です。

伊田行孝─text
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