「お土産菓子=北海道のアイコン」概説

新千歳空港や札幌駅をはじめ、道内の空港や主要な駅の売店には多様なお菓子が並べられている。その多くはお土産菓子として誕生したもの。そして、それらが土産として国内あるいは海外に拡散していくことで伝えられる「北海道」がある。フードライターの深江園子さんが北海道土産を考察する。
深江園子(オフィスYT)-text

「北海道のお土産店って、なぜあんなにお菓子だらけなの?」。出張族の人にそう聞かれるほど、道内空港などの売店は「お菓子推し」が強い。バイヤーに尋ねると、この配置のしかたが売り上げに貢献するのだそうです。売場には海鮮類はもちろん、メロンやラーメン、ワインやチーズまで充実している。けれどそれらは単価も高め。要冷蔵で持っていく先も限られる。だから店の最前列には、手頃でお配りにも向くお菓子を置くのだそう。そしてその多くは、なぜか洋風菓子です。

他府県へ行くと、ご城下や門前宿場の名物から生まれた数百年の銘菓がお土産菓子でも活躍しています。対する北海道は日本各地の文化のパッチワークで、自然発生的な「銘菓」は(本当に良いものがあるのに)、お土産マーケットのごく一部。売れ筋の多くは生まれながらのお土産菓子か、そのつもりで育て上げたものです。こう言うと、道産子は自宅用にもよく買うじゃないか、という意見もあるでしょう。けれど白い恋人、ROYCE’生チョコ、マルセイバターサンドといったメジャー商品の生い立ちを見ると、私たちが馴れ親しむ頃にはもう、道外土産として売り込まれていたようです。

お土産菓子に必要なスペックは、時としてケーキ店のお菓子と真逆です。例えば私がケーキを選ぶなら、手づくりの店で旬のものを求め、持ち運びは冷やしてていねいに。一方、お土産菓子には常に同じ品質を期待し、壊れにくく(できれば軽く)、賞味期限のある程度長いものを選びます。そして何より、「これは北海道だね」と誰もが納得できること。そうした結果、お土産菓子は「外から見る北海道」を映し続けてきたのです。西洋式農業のイメージであれば、地元の乳製品は欠かせませんし、平成生まれの商品では、その他の原料もほぼ道産。また、海鮮おかきやポテトスナックなど「甘くないお菓子」も、道産原料をおいしく使って伸びており、そこに食べものとしてのリアリティがあります(余談ですが次の注目原料は「豆」。乳製品や砂糖、小麦と並んで国内トップ産地なのに決定打がなく、洋菓子で活かすか、新しい和菓子が登場するか、注目しています)。

函館駅でも地元生まれの人気洋菓子が最前面で存在をアピールしている

北海道と“内地”とのイメージギャップは日々起きています。「梅雨がなく、牧場が地平線まで続き、野生動物がいっぱい」と一括りに言われても、否定はできない北海道(昔、期待に応えたくて「実家がクマ牧場」って言ってました)。クッキー、チョコ、チーズケーキといった面々の「ね、北海道でしょ?」という説得力は、そんな外からの期待で完成したに違いありません。私みたいなホラはNGでも、北海道へのファンタジーを少しばかり補ってくれるのが洋風のお土産菓子なら、それも悪くない。なぜかって、日本の洋菓子自体が異国への憧れから始まったから。北海道のお土産菓子はイメージを時には利用して、独自の「らしさ」を追求して全然OK! そんな思いで次のヒットを探しています。

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