前列中央「かおるいえ(大)」972円、左右各2つは「かおるいえ(小)」756円(税込)。 ※前列両端と後ろのフォトスタンドは「軟石や」のワークショップで色付けしたもの

[カイおすすめの北海道土産] 4万年前に生まれた札幌のイシズエ

まちを感じる「札幌軟石」の雑貨

札幌市内に遺る古い建物の建材に使われている「札幌軟石」。石でありながらやわらかい質感と色合いが、建物にも優しい表情を与えている。「軟石や」では、不思議な魅力をもつ札幌軟石を加工して販売する。札幌のまちをイメージできるお土産に、軟石雑貨はいかがだろうか。
行天二季子-text 伊田行孝-photo

札幌軟石は、およそ4万年前に札幌の南側、支笏湖にあたる場所で起きた噴火によって発生した火砕流が冷えて固まった「溶結凝灰岩」という岩石。火に強く保温効果があり加工しやすい札幌軟石は、古くから札幌近郊の蔵や住宅、庭石に使われている自然が生んだ歴史のある建材のひとつだ。今もまちのあちこちに軟石造の建物が見られ、札幌の原風景のひとつになっている。

1926(大正15)年に札幌控訴院として建造された札幌市資料館は、札幌軟石で造られた代表的な建造物

1926(大正15)年に札幌控訴院として建造された札幌市資料館は、札幌軟石で造られた代表的な建造物

こんなに素敵な素材が知られていない!

小原恵さんは「軟石や」を立ち上げる前は札幌軟石を扱う石材店に勤務、その際に建材のPRのために端材でマグネットを作ったのが軟石雑貨づくりのはじまりだという。「PR先で手に取った人が軟石の小物に興味を示してくれるようになりました。建材として軟石が広まってほしいという期待が高まると当時に、軟石が知られていない事実も痛感し、軟石の歴史、札幌の歴史をもっとたくさんの人に広めたいという気持ちが芽生えていきました」と、軟石雑貨の始まりを話してくれた。

小さな頃から軟石に憧れていたという「軟石や」代表の小原恵さん

小さな頃から軟石に憧れていたという「軟石や」代表の小原恵さん

「南区の石材屋さんに、変わったものをつくっている人がいる」。そんな噂を聞きつけた地元の商店街から声をかけられて参加したイベント出展を機に、液体がしみこみやすく揮発しやすい札幌軟石の特性を活かした商品、アロマストーン「かおるいえ」が誕生。三角屋根の家型に加工された石に窓や石積み風の絵がつけられている。見た目も手触りも素材感がのこっていて、まるで軟石の建物の一部を部屋にもちこんだ気分だ。「札幌のまちで見た軟石造の建物を楽しい記憶と一緒に持ち帰った先でも思い出してほしいですね」。はるか4万年昔の土地に存在していたものを静かに含みながら、こうして今私たちの手に中にあるのはとても不思議な感覚だ。

近隣の大学との連携による商品も。なべしき各4000円

近隣の大学との連携による商品も。なべしき各4000円

石文化が残るまちから

いまは石材店から独立して活動する小原さん。「かおるいえ」の出展をきっかけに、羊毛、植物、木材など異素材を扱うクラフト作家さんとのつながりもうまれ、アロマストーン「かおるいえ」の他、石の鉢、フェイクグリーンを合わせたミニオブジェ、看板・表札など作品の幅も広がっている。もちろん、建材としての軟石の活かし方もアドバイスしてくれる。

すべて手づくり。加工はしやすいが、細かな粒子状の処理が大変だという

すべて手づくり。加工はしやすいが、細かな粒子状の処理が大変だという

小原さんの活動と共に札幌軟石の活躍の場も増え、軟石雑貨を扱うお店も札幌市内の雑貨店、観光ホテル、ミュージアムショップから、小樽、函館、最近は東京でも販売されるようになった。現在は、かつてたくさんの石切り場があった南区石山(いしやま)にある札幌軟石づくりの一軒家が工房兼店舗。札幌の石文化が遺るまちで、手に取った人に札幌の歴史、軟石が受け継いできた人とまちの物語が伝わるような作品をつくっている。
ちいさな建物にまちの思い出を重ねて、軟石雑貨を札幌のお土産にしてみては。

石ばかりなのに不思議と軟らかな居心地を感じる店舗

石ばかりなのに不思議と軟らかな居心地を感じる店舗

●軟石や
北海道札幌市南区石山1条2丁目9-22
TEL:090-9425-0573
WEBサイト

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