「土地と食と酒」のマリアージュを

この地に「北海道」と名がつけられて150年。
その開拓期、極寒の中で移住者たちは何を思ったのだろう。何を糧に日々をやり過ごしたのだろう。
一杯の熱燗がもたらしたのは、春への希望か、望郷の念か、あるいは絶望か。

北前船は多くの酒を運んだが、それを容易に手に入れることができた土地は少なかったはずだ。
そうした新天地で生きる人々の需要に呼応するように明治期には多くの清酒酒蔵が北海道の各地に生まれた。
その後、紆余曲折を経て現在は12の蔵が、地の酒を醸している。

かつて北海道の清酒の評価は決して高くはなかった。しかし、米農家の努力で道産の「吟風」「彗星」といった酒造好適米が実り、また企業や杜氏ら作り手の熱意によって、今では道外の酒どころに負けないものになっている。

北海道の各地で「観光」を意識した地域づくりが進められている。雄大な景観に加え、各地の多様な食材や固有の味覚は北海道の魅力の大きな柱だ。地の味を求めて人は遠方に足を向ける。

最近、マリアージュという言葉をよく聞く。結婚・婚姻という意味のようだが、日本ではもう一つの、飲み物と料理の相性として広まった。
地の料理と、地の酒。ここに、それらを生んだ地の営みを加えてマリアージュし、「土地の物語」として発信することができれば、食による観光を今以上に大きく展開していくことができるはずだ。ワインでは少しずつそうした取り組みが広がってきているが、地域の産業とともに歩んできた清酒が加わることで、北海道のおもてなし資源はさらに広大なフィールドを得るのではないかと思う。

とはいえ、まずは「道産酒LOVE」のココロで、寒い冬を楽しみつつ…。

伊田行孝─text
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