歩いてみたら、出会えた、見つけた。

おいしい話

間違いない! 八雲の食べ歩き

日本海と太平洋の海産物を楽しめ、酪農王国でもある八雲町。
地元の人から「間違いない!」といわれる店を食べ歩き、あらためて感じた、この土地の奥深さ。
八雲ならではのロケーションも、ぜひ味わってほしい。
矢島あづさ-text 露口啓二-photo

寿し処かきたの豪華海鮮丼(左)、元山牧場直営エルフィンのアイスクリーム(右)

天然アワビの旬!! 秋ならではの海鮮丼ランチ

寿し処かきた

「子どもの頃は、バフンウニやアワビがおやつ代わりだった」と笑う店主の垣田篤さんは生まれも育ちも熊石っ子。この地に寿し屋を構えて44年。アイヌ語のクマウシ(魚を乾かす竿のあるところ)から地名が由来するように、古くから漁業が盛んな土地だ。

熊石ではミネラル成分が豊富な「熊石海洋深層水」でエゾアワビの養殖を行っているので、年中気軽にアワビを食せるのだが、「うちは、やっぱり天然にこだわる。ほら、いけすに、天然ものと養殖ものがいるから比べてごらん」と自信満々。茶色の殻と肌色の身で大ぶりなのが天然で、青みがかった殻と白い身で小ぶりなのが養殖。日本海側は4月から漁が始まり、春は6、7月上旬まで、秋は10、11月と天然アワビ漁が解禁となる。

あわび踊り焼き(2個)1500円 豪華海鮮丼2800円

あわび踊り焼き(2個)1500円 豪華海鮮丼2800円

海の幸17種は盛ってあるだろうか。海鮮丼の豪華さに目を奪われながら、汁物に口をつけると一気に磯の香りが広がった。ああ、日本海の味だ。まず、主役のコリッとした歯ごたえ、コクの深さに頬がゆるむ。シマエビも地元産、初めて食べる旬の味。イカの甘み、荒波で育ったホタテもうまい。「日本海育ちは、一味も二味も違うはず。うちは宣伝しなくても、お客さんが広めてくれる。リピーターも多い。だから、手は抜けない」という大将にうなずきながらも、箸は止まらない。ちょっと贅沢な熊石ランチに後悔なし。

●寿し処かきた

営業時間/11:00~21:00 平日ランチ11:00~14:00
定休日/不定休
北海道二海郡八雲町熊石雲石町52-1  TEL:01398-2-3148
WEBサイト


こだわりの放牧酪農から生まれたチーズ

チーズ工房小栗

チーズ工房小栗

牛が牛舎に入るのは、朝と夕方の搾乳のときだけ

広さ40haの放牧地を70頭近い牛が自由に歩き回り、好きなだけ草を食む。ふん尿がそのまま牧草の堆肥になるから、化学肥料も農薬も必要ない。大地に横たわる牛の姿は、開放感に満ちあふれていた。酪農の歴史が古い八雲でも、小栗牧場のような放牧を行っている牧場は珍しい。

チーズ工房小栗

「牛が病気しない酪農はできないの?」美笑子さんの言葉に放牧を決意した隆さん。「チーズが評価されたら、うちの牛乳、牛たちが評価されたと思う」と美笑子さん

1906(明治39)年に入植した祖父の時代から110年。デントコーンなどの穀物を配合した濃厚飼料で効率よく牛乳を量産していた時代もあるが、20年ほど前から牧草がメインの放牧酪農に転換した。5月上旬から昼夜放牧し、冬も昼は野外で過ごさせる。小栗美笑子さんは「もともと牛は草食動物。濃厚飼料をやめて乳量は減ったけれど、なにより牛が健康になった」という。「牛が心地よければ、ミルクに力がつく。チーズもおいしくできる」それを伝えたくて、2004(平成16)年からチーズ工房を始めた。

チーズ工房小栗

左後ろから梅酒で洗ったウメ、ヤクモ、左前からマンステール、生チーズ

チーズ工房小栗

手づくり感たっぷりのカチョカバロ

美笑子さんのチーズは大量生産できない。自宅の一部を改造した工房には店舗スペースもない。しかし、牧場でチーズを入手するとき、玄関先で「農家さんから直接おすそ分けしていただく感じ」で受け取れるのが、なんともうれしい。ストレスのない牛の表情を見るだけで、チーズの価値が何ランクも高まる気がした。

【取り扱い商品】
◎ペレ/1カ月半ほど熟成させた深みがある人気のセミハードタイプ
◎ウメ/梅酒で洗って1カ月熟成させたウォッシュタイプ
◎モッツァレラ/ミルクの風味が高いフレッシュタイプ
◎生チーズ/つくり立てそのままのフレッシュタイプ
◎ヤクモ/モッツァレラを1週間ほど熟成させたカチョカバロ
◎マンステール/塩水で洗って1カ月ほど熟成させたウォッシュタイプ

チーズ工房小栗

●チーズ工房小栗

北海道二海郡八雲町春日164-8
TEL:0137-64-3436 FAX:0137-64-3903 E-mail:oguri@cocoa.ocn.ne.jp
■TEL、FAXまたはメールからの注文で、工房から直送(料金着払い)。
■丘の駅 八雲パノラマパーク物産館(噴火湾パノラマパーク内)でも販売。


地元で生まれ育った希少な八雲和牛

精肉店 ふるや 焼肉舎

あっさり、いくつでも食べられる八雲和牛サーロインステーキ2500円~

あっさり、いくつでも食べられる八雲和牛サーロインステーキ2500円~

90年ほどの歴史がある精肉店「ふるや」のルーツは、牛飼い、家畜商、八雲で最初に和牛を飼い始めた古谷牧場だ。牛舎があった場所に現在の店舗がある。3代目の古谷伸一さんは「僕が後を継いだ35年前、まだ牛肉は扱っていなかった。豚肉、ラム肉、鶏肉ばかり。5年ほど経って、うちの牛舎で自家用に飼っていた和牛を出すようになった」という。

釣りが趣味の古谷さん。「釣り情報を聞きに来るお客さんもいますね」と笑う

釣りが趣味の古谷さん。「釣り情報を聞きに来るお客さんもいますね」と笑う

現在、八雲で生まれ育った和牛を扱っているのは田原牧場の1軒のみ。「ふるや」専用の和牛を育成してもらい、通常は月1頭、11、12月は月2頭のペースで販売している。希少な和牛なので、よく売れる焼肉やすき焼き用だけでなく、残りの部位もハンバーグやソーセージに加工して店頭に並べる。八雲和牛の特徴は、脂がのり過ぎていないこと。若いうちに出荷するため、あっさり食べられる。

和牛ミックスセット(カルビ、サガリ、上タン)ライス・スープorみそ汁付き3050円

和牛ミックスセット(カルビ、サガリ、上タン)ライス・スープorみそ汁付き3050円

さらに珍しいのは、北里大学獣畜産学部附属フィールドサイエンスセンター八雲牧場が生産している「北里八雲牛」。噴火湾からの潮風を浴びたミネラル分たっぷりの牧草、100%国産飼料で育った和牛で、黄色味をおびた牛脂、噛むほどに肉のうまみを楽しめる赤身が特徴。ほとんど東京に出荷されるため、地元でもなかなか味わえない。精肉店に併設する焼肉舎が地元でも、観光客にも人気なのがうなずける。

焼肉舎の座敷から見える、牛舎の面影を残す古いサイロ

焼肉舎の座敷から見える、牛舎の面影を残す古いサイロ

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●精肉店 ふるや 焼肉舎

営業時間/精肉店9:30~20:00 焼肉舎11:30~21:30(21:00LO) 
定休日/毎週月曜日
北海道二海郡八雲町元町40  TEL:0137-62-2533 FAX:0137-62-3717
WEBサイト


海が見える牧場で食べるアイスクリーム

元山牧場直営 エルフィン

元山牧場直営 エルフィン

エルフィンの奥、ハーベスター八雲から眺めた元山牧場の絶景(撮影:伊田行孝)

太平洋を望むロケーションが人気の噴火湾パノラマパーク。その敷地に隣接し、国道5号からも、道央自動車道の八雲PAからも行けるアイスクリーム工房エルフィン。牧場を眺めながら、しぼりたての牛乳でつくられたアイスクリームが食べられる。それだけで、ここに立ち寄ってよかったと思う。牧場に次々とカモメが降りてくる、八雲ならではの光景もおもしろい。

元山牧場直営 エルフィン

「牛乳の味がわかるミルク味がおすすめ」と美芳さん(撮影:伊田行孝)

大正時代、愛媛から13歳で北海道に移り住んだ初代は、札幌でレンガ職人として働いていた。八雲に入植し、堆肥のために牛を飼っていた農家が多い中、元山牧場ではバターをつくり、横浜に卸していた時代もある。当時使われていたバターを製造するための道具チャーンは、現在、雪印メグミルク「酪農と乳の歴史館」に展示されている。

元山牧場直営 エルフィン

抹茶とラズベリーミルフィーユ(撮影:伊田行孝)

元山牧場の4代目・元山美芳さんは、20年前に父親が始めたアイスクリーム工房も引き継いだ。「納得のいくアイスをつくるには、温度管理が大変。人を雇っても、力仕事がきついので続かない。結局、私が1人で仕込むことに…」と汗をかきながらも、どこか楽しげだ。「しぼりたてを低温殺菌した牛乳は、ほんのり自然な甘みがあり、のどごしもすっきり。そのおいしさを生かしつつ、いろいろな味にチャレンジしています」と美芳さん。

【取り扱い商品】
アイスクリーム(1色盛り・2色盛り)400円
ソフトクリーム(5~9月限定販売)350円
牛乳140円~

元山牧場直営 エルフィン

●元山牧場直営 エルフィン

営業時間/5~10月11:00~18:00 11月11:00~17:00
定休日/不定休
北海道二海郡八雲町浜松366-10 TEL:0137-62-2078 FAX:0137-63-4880
WEBサイト

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