歩いてみたら、出会えた、見つけた。

手づくり

貝澤雪子さんから教わるアイヌ料理

古くから伝わるアイヌ料理「シト(団子)」をわが家でも気軽に作れる方法を教わりに、
お腹を空かせて二風谷へ出かけた。
矢島あづさ-text 露口啓二-Photo

冠婚葬祭や大切な儀式に作った

「昔は杵と臼で、イナキビを粉にしたものだけど、いまはコレがあるからね」と、貝澤雪子さんは、茶目っ気たっぷりにミルサーを出してきた。目の前の人をほっと包み込むような笑顔の持ち主は、二風谷を代表するアットゥ(樹皮の反物)織りの第一人者。「嫁に来た次の日から、お義母さんのアットゥの特訓が始まったの。実の娘より厳しく仕込まれて。いま、こうして続けていられるのも、そのおかげ」と若き日の思い出を語りながら、雪子さんは洗ったイナキビをキッチンペーパーの上に広げた。

シトとはイナキビや米粉を使う団子のことで、冠婚葬祭やイヨマンテ(熊祭り)の儀式などに、コタンの女が総出でチセの囲炉裏を囲みながら作ったもの。「多い時はみんなで400個は丸めた。うまくできるまで、よく叱られた」という。

アイヌにとって大切な保存食となるトゥレ(オオウバユリ)のことを尋ねると、「あれはなかなか手に入らない。昔は赤ツツジが咲くころに球根を採り、葉が枯れたら採るなと教えられた。種が土に落ちて、7年経たなければ花は咲かないの」。大切な情報を惜しげもなく教えてくれるその人柄に、ただただ、感謝するばかり。「量が少ないから、こんなに楽をして作るのは初めて」と笑われた。

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雪子さんはアットウ織りの合間に、「ランチハウスBEE」でアイヌ料理を作る。「店は、気が向いたら開けるの。早くても7月からだね」と笑う。どうしても食べたい方は、10人以上から要予約。
北海道沙流郡平取町字二風谷76-7 TEL:01457-2-3540

昆布たれで食べる団子

コンプシト

【材料】7個分
●シト
イナキビ(モチ種) 粉でお椀1杯
上新粉  お椀1杯
ぬるま湯  適量
沸かし湯  適量
●昆布たれ
昆布 10cm
油  適量
砂糖 20~30g(※)
水  20~30g(※)※好みで調節

 

シトの作り方

  1. イナキビは、米のように流水で糠を洗い落とし、ぬるま湯に7、8分つけておく。
  2. 新聞紙の上にキッチンペーパーを置き、イナキビを広げて少し湿り気が残るくらいまで約10分干す。
  3. イナキビをミルサーで粉末にし、ザルでふるう。
  4. イナキビの粉と上新粉をボウルに入れ混ぜ、少しずつぬるま湯を加えて、耳たぶのやわらかさになるまで、よくこねる。
  5. 生地がまとまったら、7cm大くらいの平たい団子を作り、火が通りやすいように、真ん中を親指で押してくぼみをつける。
  6. お湯を沸かして団子を入れ、なべ底につかないようにしゃもじで下からすくうように、ひと混ぜする。
  7. 火を少し弱め、団子が静かに浮いてきたら、すくって冷水をはったボウルに入れる。
  8. 団子を流水でよく洗うと、ぷるぷるに仕上がる。
アイヌ料理01
アイヌ料理02
アイヌ料理03
アイヌ料理04

 

昆布たれの作り方

  1. 昆布を油で揚げ、ザルにとる。
  2. 冷ましてからポリ袋に入れ、すり棒などで砕き、ミルサーで粉末にする。
  3. 鍋に水、砂糖、昆布の粉末を入れ、弱火にかけてとろみがでるまでよく混ぜる。
コンプシト

コンプシト

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『聞き書 アイヌの食事』社団法人 農山漁村文化協会
『季刊誌カイvol.21特集ものづくりと、つくり人』株式会社ノーザンクロス
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