まちの人に聞いて見た「あの風景、この味、お気に入り」。

パンを作って知る名寄盆地の恩恵

石田誠次さん

石田さんは室蘭工業大学で粉体工学を学んだエンジニア。粉体工学とは、例えば汚水処理等で活かされる研究分野。そんな石田さんがなぜパンの道にと聞くと「以前、実家が名寄で学校給食用のパンを製造していました。それと“粉”つながりですかね」。

コンビニ大手のローソンで10年間、店内調理部でお弁当やサンドイッチ、パンなどの商品開発に携わった。今もローソンの売れ筋人気商品・厚切りかつサンドも石田さんがプロデュースしたもの。
「3000店舗以上に流れる製品を外部委託して製造してもらうコンビニと、1店舗だけの商品づくり・経営を考える今とでは、同じパンであってもまったくの別ものですよ」と言う。
パリの有名店でも修業を積み、2015年9月に「ベーカリーいしだ」をオープンした。

「名寄の年間で70度近い寒暖差によって作られる野菜のおいしさを伝えていきたいんです。作物を育てる農家さんと私のような加工をする者が連携して、多様な商品を作りだしていけば、もっとその素晴らしさを外に向かって発信していけるはずですから」
名寄で採れるブルーベリーやコーン(ゴールドラッシュ)、ピーマン等を、意欲ある農家と連携して仕入れる。農業者にとっては規格外品の活用になり、鮮度を保つための加工を市内の福祉施設に依頼するため、地域での経済循環にもつながる。

「地元に帰って野菜を食べて、改めてここの農作物の素晴らしさを感じました」。これからは地元野菜のピッツア、もち米を使ったクロワッサンも販売する予定だ。

小麦は95%以上が道産。地元の野菜を使用した商品には野菜づくりの思いを込めた農業者のメッセージも添えて

国道40号沿いに立つ「バーカリーいしだ」。やわらかなオレンジの外壁が目印(北海道名寄市西4条南2丁目10-1)

寒暖差と意欲ある農業者が生むおいしい農作物