まちの人に聞いて見た「あの風景、この味、お気に入り」。

江部乙の美しい農業景観

江崎正典さん

2015年10月、滝川市江部乙町が「日本で最も美しい村」に正式加盟した。評価のポイントは地域資源としての「日本一の菜の花畑」と「防風林に囲まれたりんご畑」。
江崎さんは江部乙で生まれ育った農家の3代目で、滝川の「なたね生産組合」の組合長を務める。江崎さんの父親は江部乙でも早くに菜の花栽培に取り組んだ。
「菜の花の栽培を始めて20年くらいになります。菜の花は連作が難しく、4~5年のサイクルで畑を回しながら作っています。なたね油をしぼるのですが、やがて収穫前の景観が注目されるようになったのです。最初は地元の人に喜んでもらえればと、村の祭りのような感じで始めたのですが、今では多くの人に来てもらえるようになりました」。
作付面積日本一の冠もあり「たきかわ菜の花まつり」には毎年10万人前後が江部乙に足を運ぶ。かつて江部乙の農作物といえばリンゴが有名だったが、生産者の高齢化や後継者不足などもあり、リンゴの収穫量は少しずつ減少している。リンゴ畑を畑作に替えていくうえで菜の花は有益な作物となった。
「菜の花が有名になり、果樹園の防風林も美しい景観として評価されました。滝川の活性化に貢献できるのはうれしいことです。その一方で、リンゴも菜の花も、江部乙の農業景観は観光資源としてのものではなく、農業の機能として、農家の生活様式として、ここにあるのです。私たち農家は江部乙を拓いてきた先人たちが作りあげてきた宝物という自負を持って、これからも土地とともに生きていくし、その仕事によって訪れた方が喜んでくださるなら、やりがいもあります」。
菜の花の見物によって農家が直接的な収入を得ることはない。それでも景観を守り続ける人々がいることを、訪れる側も意識しながら、静かに愛でたい。

菜の花は5月中旬に黄色いじゅうたんを広げる

たきかわ農業協同組合が生産する「なたね油」は昔ながらの圧搾法で作られる