海を渡るオミヤたち~お土産最前線「新千歳空港」

飛行機が観光やビジネスの足となって久しい。しかし、そんな日常の移動手段ではあっても、なぜだろう、空港の出発ロビーは「これから遠くへ行く・帰る」という人々の高揚感に溢れている。この高揚感はまた、きっとお土産という消費行動にも深く関与しているのだろう。
伊田行孝-text 黒瀬ミチオ-photo

ターミナルビル利用者の多くが前を通る場所にある「スカイショップ小笠原」

土産物としての差別化はこれから

1961(昭和36)年12月、千歳空港の旧ターミナルビルの開業とともに出店し、空港で半世紀以上の歴史を誇るのが総合土産店の「スカイショップ小笠原」。
現在は新ターミナルビル・センタープラザの一等地に100m²の店舗を構え、1日の平均来店客数は約2000人。店舗を統括する(株)小笠原商店の小笠原琢専務の言葉は率直だ。

「北海道のお土産という意味で他の商業施設と差別化できているかと言えば、そうではありません。おそらく、多くの土産店も同じではないでしょうか。総合土産店としての売れ筋はやはりお菓子ですから、前面には六花亭、ロイズ、石屋製菓といった有名メーカーの商品が並んでいます。それで現状、十分に商売は成立するからです。しかし、今後もそれで安泰という保証はありません。オリジナル商品の開発など着実に成果も出始めており、これからはその分野にもより力を入れていきたい」

同店には今、3つのオリジナル商品がある。ハスカップチーズクリームをホワイト生チョコで包みパイでサンドした「新千歳発」は六花亭とのコラボ商品。世界的な造形集団・海洋堂が作る北海道に生息する動物たちのフィギュア(ストラップ)がつくジャガイモクッキー「北海道ランド」は月寒あんぱんで有名なほんまとタイアップした商品。二世古酒造とのコラボでは「吟醸バウム」が誕生している。いずれも、ここでしか買えないオンリーワンの北海道土産として、リピーターが多い商品だ。

六花亭とコラボした「新千歳発」は専用カウンターを設けて販売している

小笠原商店では国際線ターミナルにも和雑貨専門の「小笠原商店」を出している。こちらはスカイショップに比べて小さな店舗で、平均来店客数も40~50人。
「日本を訪れる海外の方も2回目、3回目とリピーターが多くなり、初回の時のようにお土産をとにかくたくさん買うのではなく、厳選しています」というのは店長の小室麻美さんだ。
海外客に人気の土産は、と聞くと「国によって違います」。例えば中国人には鉄器類や枕、台湾人はわさびや醤油、韓国人はハンカチや鏡といった日常品、欧米人には飾り物が人気だという。今の売れ筋は2700円のラベンダーマクラ。

国際線ロビーに出店した「小笠原商店」。“和”を感じさせる多様な商品が並ぶ

「爆買いは少なくなったというより、もうないと言った方が正確です。とはいえ、国内線に比べて客単価は高いので、ニーズを見ながら品揃えを戦略的に進めていく必要があります。売上そのものは目標に十分に達しています」とは小笠原専務。

「これから様々な差別化を図っていきたい」と語る小笠原琢専務

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