TALK-3 札幌の下町がつくるモノ・コト~ふたたび頓宮に人は集う

北海道神宮「頓宮」には、札幌最古の“狛犬”がいる。この狛犬には、縁結びの御利益があると評判になり、「都心の隠れたパワースポット」をお参りする若い人が増えているという。人々をひきつける小さな神社から、まちづくりのパワーがいよいよ動き出そうとしている。
森由香-text 黒瀬ミチオ-photo

柴田寿治/寿珈琲店主 雑貨と飲食のマーケットイベントの企画・運営も手掛ける
山本 忠/(株)ピントハウス 不動産事業部 部長
新谷一就/札幌南1条東郵便局 局長
近藤洋介/(株)ノーザンクロス 技術士(建設部門 都市及び地方計画)
中島 忍/平成2年北海道神宮に奉職 平成27年4月より頓宮の権禰宜(ごんねぎ)

山本 頓宮で「さっぽろ下町マルシェ」を開催したあと、中島さんから「地域の皆さんが垣根なく集まれる場をつくっては?」という提案があり、それが「頓宮の集い」です。居住している方、または事業所のある方は自由に参加でき、毎回テーマを決めて、講演をしてもらったり、話し合いをしたり。そのあとの親睦会では腹を割って話そうと(笑)。何かを決めるのが目的ではなく、今は集まることに意義があると思っています。昨年1月からスタートして8回開催し、参加者は毎回50人くらい、登録者は140名ほどになりました。

柴田 「頓宮の集い」でもテーマにしてみたいのが、地域の名称について。僕は地下鉄の「バスセンター前」という駅名が気になっていて、もっと地域を表現できる名前がないものかと。かつて東側に路面電車が走っていた時は「頓宮前」という駅があったそうで、そういう愛着がわくような名前を考えてみたい。

近藤 創成イーストはだいぶ認知されましたけど、外からの目線で地元では使わない。行政の名称である創成東地区もあまり浸透していない。名称も含めいろいろ課題があるけれど、どうしたらいいかわからない状態が続いていたと思うんですね。それが「なんだか動きはじめた奴らがいるぞ」と注目してもらえるようになった。だから僕たちも、地域とちゃんとお付き合いするために、あやふやな有志ではなく、まちづくりの組織をつくる段階にきています。

新谷 私が勤める郵便局はもう80年を超えています。郵便局は使う人がいないと無くなってしまいますし、地域があっての郵便局です。ここで仕事をさせてもらっているのだから、何か地域にお返ししたいというのが私のスタンスです。たぶん、町内の皆さんも私には何かと言いやすいと思うので、新しい組織と地域とのクッションになれればと考えています。

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柴田 ここは人口が増えているのに、町内会の加入率が低い。僕も反省してあらためて町内会に入りました。やはり古くからいる方には、僕らは警戒されていたみたいで(笑)。でも、顔をつきあわせて話してみると、「がんばりなさい」、「ありがとう」と言ってもらえる。マルシェにしてもお祭りにしても、楽しい思いをみんなで共有することが、継続の肝だと思っています。

山本 僕はずっと“東”と呼んでいるのですが、あらためて“東”の魅力を実感しています。丸井さんに歩いて10分で行けるのに、そんなに都会感がない。千年とは言わず、ちょっと手をのばすと届くような歴史があるのもいい。そして何より頓宮さんがある。人のつながりの中心が神社であれば理想的だと思います。

中島 頓宮はこの地域の氏神様ですから、古くからいる方も、新しく来た方も、足を運びやすいと思います。人と人のつながりは、地域の安寧につながります。隣りは何する人ぞではなく、顔がわかって、声を掛け合うような地域は、安心して暮らせるまちになっていくでしょう。そんなまちづくりのきっかけに、頓宮がなれればこんなにうれしいことはありません。

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【さっぽろ下町づくり社】

頓宮に集まった“まちづくり”メンバーは、法人の設立を決定。一般社団法人「さっぽろ下町づくり社」として長期的な活動をすすめていく。まず課題であった情報の発信と共有ができるポータルサイトを開設。地域の歴史と現在を掘り起こしながら、「頓宮」を中心に地域住民の交流を深めていく。

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