山内康敬さん(株)シィービーツアーズ企画部企画課課長×小島俊則さん(株)コープトラベル企画販売部主任

ツアー開発担当者に聞いてみよう!(1)

旅行会社へ行ってみると、日帰りバスツアーだけでもたくさんのチラシが並んでいる。実は、この企画ひとつひとつに、担当者の苦しみや喜びが詰まっているらしい。開発担当者はどのように「バスツアー」と向き合っているのか?企画から添乗まで担当するお二人のトークをのぞいてみよう。
森 由香-text
伊藤留美子-photo

マイカーよりバスを選ぶシニア世代

―バスツアーの現状は?

小島 コープトラベルは、コープさっぽろ系列の旅行会社です。対象はコープの組合員さんです。女性がほぼ8割、ツアーによっては9割が女性のこともあります。

山内 シィービーツアーズは、北海道中央バスグループの旅行会社です。バスツアー参加者はほぼ60代以上で、「運転はまだできるけれどめんどう」という方が多いようです。高齢化が進み、ますます年配の方が増えていくのでバスツアーはこれからも増えていく事業だと思います。

小島 一時は価格競争のような時期もありましたが、いまは安全性重視で価格も適正に戻ってきました。その分、バスツアーならではの利点や企画の中身で選ばれていると感じます。

小島俊則さん(コープトラベル)

山内 酒蔵やビール工場を見学する「お酒を飲む」ツアーはやはりバスですね。一般には非公開でも団体になると見せてくれる施設もあるので、そういうところをうまく組み込むとバスツアーの魅力をアピールできると思います。

山内康敬さん(シィービーツアーズ)

町長のバスガイドが人気に

―いま人気のツアーは?

小島 通年で人気が高いのは、「北海道の食を楽しむ日帰りバスツアー」です。中でも、あわび料理が有名な岩内町の高島旅館。宿泊の予約もなかなかとれない旅館なので、日帰りツアーとしてはやや高いのですが、すぐに予約が埋まる企画です。

山内 うちの会社はちょっと特殊で、本体の中央バスが、定番の観光地へ行く「定期観光」を開催しているので、その商品とは競合しないプランを作ります。なので、ややマニアックな企画が多いかもしれません。
最近の人気商品は、「町長がバスガイドをする日帰りツアー」です。きっかけは、月形町へのツアーを現地で打ち合わせしている時に、「せっかくなので町長も同行してくれますか?」「いいですよ」、「バスガイドもしてくれますか?」「いいですよ」、そこから話が始まったのです(笑)。このツアーがとても好評で、他の町にも広がっているところです。
そもそも町長は、町の良いところも問題のある部分も知っていて、これからこうしたいというビジョンも持っています。なので、どんな質問にも答えてくれる。ふだんは入れないところも、町長が手配してくれるので見学できる。最近のツアー参加者は学ぶことが好きな方が多いので、そのニーズにも応えているのだと思います。いま企画中なのは、月形町、東神楽町、更別村、浦臼町、新十津川町、北竜町、様似町、室蘭市などです。マスコミにも取り上げられたので、「うちの町でもやりたい」という問い合わせもいただいています。

小島 町長のガイドツアーは、気になるのでよくチェックしています(笑)。勉強熱心な参加者が多いのは私も感じます。私たち添乗員のガイドには限界があって、専門家がマイクをにぎると参加者の目の輝きが違いますから。
たとえば、「コープさっぽろまなび旅」という企画があって、その中の「健康食育マスターと行く町の魅力発見バスツアー」はとても好評でした。長めに昼食の時間を取って、そこで健康食育マスターの話が聞けるようにすると、皆さん熱心にメモをしたり、質問をされて、「次も参加したい」とリピートにつながります。

シィービーツアーズのヒット商品となった町長がバスガイドをする日帰りツアー。いつもは通り過ぎるまちも町長のガイドで「また来たくなるまち」になる(写真提供:シィービーツアーズ)

失敗を次の企画に生かす

―ツアーの作り方と苦労は?

小島 ひとつのツアーを最初から最後まで一人で担当するのが基本です。企画を立てて、現地との調整や手配をして、広告物を作り、予約の受付けをする。当日は添乗員を務め、戻ってきたら数字の管理をする。おおまかに言うとこのような流れです。
企画を立てる時に気をつけているのは、ツアーの目的をはっきりさせること。新しい観光スポットができた時は、そこをメインにするのか、サブにするのかで参加者の層がずいぶん変わります。できるだけ欲張らずに、ターゲットはある程度絞った方がいいツアーになると思っています。

山内 小島さんと同じで、メインとサブをはっきりさせるようにしています。自治体の担当者と一緒にツアーを組むと、いろいろ見せたい気持ちから盛り込みすぎる傾向があります。でも、バスの乗り降りが1回増えると、それだけ参加者も疲れてくるので、そのあたりは注意しています。

小島 苦労はやはり売れないことですね(笑)。いい企画ができたと思っても、販売すると全然予約が入らないこともあって。新しいレストランなどは、どんなにいい内容でも、二の足を踏む方が多いのです。メディア露出など分かりやすい安心材料があると集客できるのですが…。売れない時は切り替えて、次の企画に生かすようにしています。

山内 ツアーの告知をして、1週間たっても参加者が2~3人だと「失敗してしまった…」という感じです(笑)。ただ、失敗したらあきらめるのではなく、次はメインの看板を変えて、おすすめの場所をサブに入れたりします。そのツアーが無事に開催できて、自分がおすすめしていた場所に「来てよかった」と言ってもらえると、本当にうれしいですね。

※後半に続きます(9月6日公開)

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