まちの文化と、まちの日常と。

江差町は北海道の中で、とても特異なまちです。平安期には和人が定住したと言われ、まちの中央に置かれた姥神大神宮の創建は1200年代初期。江戸時代、ニシンで栄えたまちの様子は「江差の五月は江戸にもない」と謳われ、北前船が往来し多くの物資と文化と富と、そして人を渡島半島の一隅にもたらしました。明治新政府が成ってなお、戦の舞台となりました。

2017年、江差町のストーリー「江差の五月は江戸にもない~ニシンの繁栄が息づく町~」が、北海道初の日本遺産に認定されました。また、江差を象徴する「姥神大神宮渡御祭」と「江差追分」は、北海道遺産にも選定されています。
幕府や松前藩、明治政府といった中央と向き合いながらも、まちの民の暮らしと文化を守り通し、それが今も江差人の当たり前の日常として、ココにあるからこその「遺産」です。

海沿いの下町から、高台の上町から、海に目を向ければ、江差のシンボルであり北前船の良港であった「かもめ島」が望めます。夏休みが始まるとまちのあちらこちらから、子供たちが奏でる姥神大神宮渡御祭のお囃子の練習が聞こえてきます。

ニシンや祭り、江差追分に伝統の食、そして気概。まちの人々の暮らしの中に流れている「江差の五月」にふれてみたくなり、夏に出かけてみることにしました。

伊田行孝─text
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