vol.4 モール温泉 【音更町など】
琥珀色の湯には、想像以上の力が秘められている
その昔、十勝川温泉一帯はアシの生い茂る湿地で、小さな沼がいくつもあった。
冬になっても凍らない沼には、野生の馬やエゾシカが集まり、
アイヌの人々も「薬の沼」と呼び、傷をいやしていたという。
太古の植物がつくりだした
天然の化粧水のような温泉
「モール」とは、ドイツ語で泥炭のこと。ドイツには、古くから植物由来の泥炭を全身に塗る医療健康法「Moor-bad(泥炭浴)」があり、バーデン・バーデンの温泉地が世界的にも有名である。さまざまな種類の温泉が多い北海道でも、これほど植物性成分を含む温泉は珍しく、琥珀色の湯が特徴的だ。泥炭を通して湧き出す十勝川温泉では、ドイツの泥炭浴と同じような効能を期待して「モール温泉」と呼ぶようになった。温泉法に定められた泉質の分類によると、ナトリウム塩化物・炭酸水素塩泉(弱アルカリ性低張性高温泉)。
泥炭とは、太古に枯れた樹木や植物が長い時間をかけて蓄積したもので、炭化が進むと亜炭層になる。そこに含まれる有機物が地熱によって熱を発し、温められた地下水が温泉として湧きだすのだ。
火山活動によって生まれた鉱物温泉に比べて、植物性の保湿成分が多く、まるで天然の化粧水のようにまろやかで刺激が少なく、肌がしっとりする。また、短時間で体の芯からポカポカと温まるのもうれしい。湯の華の代わりに木の葉の化石状のものがときどき浮いているが、はるか昔からやってきた温泉のエキスだと思って嫌がらないでほしい。
十勝川温泉郷に
老若男女が楽しめるスパ誕生
1900(明治33)年、自然に湧き出している湯を野天の小さな箱風呂に引き入れ、地域の人々が共同浴場として利用したのが十勝川温泉のはじまり。その後、湯治用の温泉宿ができ、1928(昭和3)年、雨宮駒平が高温の温泉を掘りあて、道内屈指の温泉として知られるようになった。
そんな歴史ある温泉郷に、まったく新しいスタイルで楽しめる日帰り入浴施設「ガーデンスパ十勝川温泉」が誕生した。露天も内風呂も水着で入浴するモール温泉で、老若男女わけ隔てなく楽しめ、家族連れやカップルにも人気だ。スパ内でのホットヨガや温泉クレイパックなど、健康や美容を考えたメニューが女性客を喜ばせている。さらに十勝ならではの食材を使ったレストラン、新鮮な畑の恵みや特産品が並んだマルシェ、生ハムやチーズづくりの体験工房もあり、十勝の魅力を満喫できる観光スポットとしても注目されている。
十勝の畑で農作業をしたり
川下りやバードウォッチングも
「十勝」という地名は、十勝川をさすアイヌ語「トカプウシイ(乳房・ある・ところ)」が由来。川口が二つ乳房のように並び、乳が出る如く流れが途絶えることのない場所を表している。そんな水利と肥沃な土壌、日照時間に恵まれた十勝平野は北海道を代表する農業地帯。十勝川温泉がある音更町も、小麦、てん菜、豆類、ジャガイモなどの一大生産地だ。時期や人数の条件が合えば、農家さんから直接話を聞け、トラクターの試乗や農作物の収穫も体験できる。
また、十勝川の水質の良さは、全国の一級河川の中でも毎年上位にランクキング。北海道の屋根である大雪山連峰十勝岳に源を発し、十勝川流域は豊かな自然に恵まれ、数多くの動植物が生息・自生している。運が良ければ、山岳地帯では氷河期の遺存種といわれるナキウサギ、下流部の湖沼地帯の湿原では、特別天然記念物のタンチョウが見られる。十勝川温泉には十勝ネイチャーセンターがあるので、体験の相談や情報収集も気軽にできる。
ガーデンスパ十勝川温泉 | 北海道河東郡音更町十勝川温泉北14丁目1 TEL:0155-46-2447 |
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音更町十勝川温泉観光協会 |
北海道河東郡音更町十勝川温泉南12丁目1 TEL:0155-32-6633 |
十勝ネイチャーセンター | 北海道河東郡音更町十勝川温泉南12丁目1-12 TEL:0155-32-6116 |
北海道立十勝エコロジーパーク | 北海道音更町十勝川温泉南18丁目1 TEL:0155-32-6780 |
北海道遺産とは
北海道の豊かな自然、人々の歴史や文化、生活、産業など、道民参加により52件を選定。
モール温泉