小説家の筆が描いたまち。書かれた時代と現在。土地の風土と作家の視座。
「名作」の舞台は、その地を歩く者の眼前に何かを立ちのぼらせるのだろうか。
*この連載は、作家の合田一道氏が主宰するノンフィクション作家養成教室「一道塾」(道新文化センター)が担当しています。
第1回

(日本語) 観音力疾走 (高橋揆一郎著)

あらすじ

小さな炭鉱町で出会い、夫婦になった子連れの無智だが純な女と、乱暴だが優しい心根の男。真面目くさったのが大嫌いなこの男が、落盤事故に遭い、廃人同様になる。女は違えて覚えた観音経を唱え、何も言わずに真面目くさった無表情なままの夫の顔に涙する。

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高橋揆一郎(たかはし・きいちろう)

1928~2007年。歌志内市上歌の炭鉱住宅で出生。本名良雄。北海道第一師範学校中退後、井華(住友)炭鉱上歌志内鉱に入社し、社内報編集に携わる。1970年退職。73年に『ぽぷらと軍神』で第37回文学界新人賞。77年『観音力疾走』で第11回北海道新聞文学賞、79年『伸予』で第79回芥川賞受賞。庶民の心の底にある生へのあがきと祈りを描写し続けた作家。
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