小説家の筆が描いたまち。書かれた時代と現在。土地の風土と作家の視座。
「名作」の舞台は、その地を歩く者の眼前に何かを立ちのぼらせるのだろうか。
*この連載は、作家の合田一道氏が主宰するノンフィクション作家養成教室「一道塾」(道新文化センター)が担当しています。
第3回

(日本語) 蟹工船(小林多喜二著)

あらすじ

小説の舞台は、カムチャッカ沖で操業する北洋漁業の船とその母港の函館港。缶詰を加工する工場船では航海法や工場法の適用はなく、過酷な労働実態があった。かき集められた季節労働者は、想像を絶する労働環境とノルマに不満を洩らすが、彼らを鬼のような監督に抑えられる。労働者たちは、集団で抵抗することを覚えるが、監督は「帝国海軍」を使い彼らを弾圧する。海軍が資本家のために存在すると悟った彼らは、再び立ち上がる。

Sorry, this entry is only available in Japanese.


小林多喜二(こばやし・たきじ)

明治36(1903)年~昭和8(1933)年。プロレタリア作家。秋田県の小作農家に生まれる。北海道小樽の伯父を頼り一家で移住。小樽高商在学中から文学活動に取り組み、労働運動に関心を持つ。卒業後、北海道拓殖銀行小樽支店に勤務しながら、作家活動を始める。昭和4(1929)年に「蟹工船」を発表し注目を集めるが、不敬罪で起訴される。のち、日本共産党に入党し地下活動に入るが、特高警察により逮捕され、拷問に会い絶命。
Share this article