小説家の筆が描いたまち。書かれた時代と現在。土地の風土と作家の視座。
「名作」の舞台は、その地を歩く者の眼前に何かを立ちのぼらせるのだろうか。
*この連載は、作家の合田一道氏が主宰するノンフィクション作家養成教室「一道塾」(道新文化センター)が担当しています。
第10回

(日本語) 母(三浦綾子著)

あらすじ

秋田の小作農家に生まれたセキは7人の子どもを生み育てる。優しく親孝行だった 多喜二は1928(昭和3)年に起きた三・一五事件を題材に『一九二八年三月十五日』を『戦旗』に発表。作品中の特高警察による拷問の描写が、特高警察の憤激を買い、後に拷問死させられる引き金となった。 愛してやまない息子の理不尽な死を乗り越えて生きていくセキ。母と子の愛と慈しみにあふれた物語は、秋田弁で語られていることで、悲しみと優しさをいっそう深く伝えている。

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三浦綾子(みうら・あやこ)

1922-1999。旭川市出身。長い結核の闘病生活の後で受洗し、三浦光世と結婚。1963年に朝日新聞社懸賞小説公募に応募し、『氷点』を投稿し、入選する。『氷点』は71万部のベストセラーを記録し、何度もテレビ化、映画化される。綾子は、その後も度重なる病魔に冒されながら『塩狩峠』『道ありき』『泥流地帯』などを次々と発表。夫の光世の口述筆記に支えられての作家活動だったことはあまりに有名。亡くなるまで旭川を離れることはなかった。
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