北海道という島のなりたち

廣瀬 亘・北海道立総合研究機構 環境・地質研究本部 地質研究所 主査

北海道という島は、本当に表情豊かだ。はっきりとした四季、高くけわしい山脈やそこでしか見ることのできない高山植物、噴火を繰り返す火山、豊富な地下資源や美しい自然環境に育まれた様々な文化。人々はそれらに魅了され、世界各地から旅人が北海道を訪れている。
北海道の魅力はこの島のなりたちやたどってきた歴史と深い関係がある。ジオパークでは、大地や気候の特性・資源を生かし守りながら、豊かに暮らしていくにはどうすればよいかを長い時間をかけて模索してきた結果としての今を感じ、楽しむことができる。ここでは、ジオパークを舞台に北海道の魅力をさらに楽しんでいけるよう、北海道がどのような歴史を経ていまの姿となったのか、少しだけさかのぼってみよう。


多くの人にとって最も「長い時間」の物差しは自分の人生だろう。しかし、ジオパークでは人類が出現するはるか以前、数千万年~数億年以上にわたる大地の歴史、さらには地球規模で展開されている大地の変動までをも、科学を踏まえて織り上げられた物語「ジオストーリー」として体感することができる。

火山活動や地殻変動とそれらが生み出した豊かな資源、寒冷な気候、ジオパークで触れ
ることのできるさまざまなジオストーリーは、変動を続ける地球の活動によって大地に
刻み込まれてきた。

地球の表面は厚さ数km~数十kmにおよぶ十数枚の巨大な岩盤(プレート)で覆われ、それらは地球の内部をつくる岩石の対流にのって1年で数cm~十cm程度(爪がのびるのと同じくらい)の速さでゆっくり動いている。北海道のあたりでは、大陸をつくるプレートの下に、海底をつくるプレートが沈み込んでおり、岩盤が擦れあうことにより地震が繰り返し発生している。陸から海に流れ込んだ土砂の一部もまた、プレートとともに地下深部へともぐり込んでいき、それらに含まれている水がきっかけとなって地下の岩石が融けマグマが発生する。マグマが地上に向かって上昇し噴出したところが火山である。こうした地球規模の変動とそれに伴う物質循環は、はるか43億年以上前から続いている。私たちが暮らす北海道も、こうした地球規模の変動によって陸地の断片が集まり地震や火山活動を繰り返すことで作られたのである。

恐竜が地球を支配していた8000万年前、北海道はまだ一つの島ではなく、数千kmにも及ぶ広大な範囲に散らばっていた。北海道の西半分は中国やロシアなどがある巨大な大陸の一部、東半分はそのはるか沖に浮かぶ島々だった。のちに北海道の大地となる様々な場所は、プレートの動きにしたがって少しずつ移動し、やがて今のアジア大陸の東のはじでぶつかり合うようになり、境目で大地は盛り上がって高い山脈をつくる。今から2000万年前頃には、移動しぶつかり合う大地は、ほぼ今の北海道の位置までやってきた。さらに激しくなった大地のぶつかり合いによって、ついに地球の地下深くを構成するマントルというところの岩石までもが顔を出すようになる。一方で、北海道をとりまく大地では巨大な割れ目から膨大な溶岩が噴き出し、そこには海水が入り込んで海へと姿を変えていった。

その後、地球はだんだん寒くなり、厳しい寒冷期(氷期)とやや暖かい時期(間氷期)を繰り返すようになる。山に降った雪はそのままとけずに残り、一部は氷河となって日高山脈など高い山を削っていった。陸地に降った雪が融けなくなったことで海面は大きく下がり、陸続きとなった大陸からはマンモスやオオツノジカ、ナウマン象などの動物、そして彼らを追いかけて人類もやってきた。

2万年前頃から地球はだんだんと暖かくなり、雪や氷がとけたことで海面は再び上昇し、北海道は今のような島となった。寒い時代に北海道に住み着いていた動物や植物は、高山などの涼しいところを見つけ、今はそこをすみかとしている。プレートのぶつかり合いは今も続き、それによって北海道では多くの火山が活動している。

●現在の北海道ができるまで

山脈  火山  プレートの動く方向

北海道はまだ、大陸の一部とその島々などで、何千kmもの範囲に散らばっていた。海ではアンモナイトや海棲は虫類などが生息している。

プレートの動きによって北海道の大地はしだいに近づいていく。陸地には広大な湿地に、のちの石炭を生み出す森林が広がっている。

北海道の大地はほぼ現在の位置にやってきていた。激しくぶつかり合う大地の境目では、のちの日高山脈となる高い山地が隆起していく。

北海道のあちこちで火山が活動し、白滝では黒曜石が形成された。

海面が下がったために、北海道は大陸と陸続きになった。

北海道はふたたび島となり、あちこちで火山が活動している。

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