千歳と飛行機のつながりは、1926(大正15)年にさかのぼる。この年の8月、千歳村(当時)に初めて鉄路が敷かれた。それを記念して小樽新聞社(現北海道新聞)が観楓会を開くことになり、観楓会に合わせて空から宣伝ビラをまこうという企画が持ち上がる。それならば、飛行機を仰ぎ見るだけではなく着陸させたいと村の人々は希望したが、その場所がない。ならば作ってしまえと村民総出で長さ200mの滑走路を2日間で整備したのだという。飛行機を間近に見たいという思いから第一歩を記した千歳空港は今、国内線・国際線合わせて年間2000万人以上の利用者を誇る国内屈指のエアターミナルビルへと成長した。
一般に空港利用は航空機利用者と送迎客だが、空港ビルを管理する北海道空港(株)では、さらに新しい来港客の開拓に力を入れる。
2011(平成23)年、新千歳空港は商業施設を全面的にリニューアルした。その目的を同社の担当者は「航空機利用者だけではなく、地域に暮らす方々も空港に足を運んでいただける時間消費型、滞在型の施設にすること」と言う。つまり、空港から飛行機でどこかへ行くのではなく、空港そのものを目的地にしてもらおうということだ。コンセプトは「空港で過ごす、楽しむ、発見する」。物販や飲食店に加えて、映画館や温浴施設、さらには「ドラえもん」や「ハローキティ」といった人気キャラクターのエンターテイメント施設など、子ども連れで一日を十分に過ごせるだけの施設が新千歳空港のターミナルビルには揃っている。この考え方は「飛行機を間近で見たい」と無償の汗で滑走を整備した90年前の村民たちの思いとどこかで通底しているのかもしれない。
5年前のリニューアルにより飲食・物販等の商業施設は従来の約100店から約180店舗へと拡大した。そのうち約120店が北海道の企業だ。テナントの売上総計は2011(平成23)年度の291億円から、2015(平成27)年度には415億円と40%以上の伸びを示している。
「ここは北海道の玄関口です。そのため、商業施設トータルの方向性として目指しているのは、北海道のショールームなのです。北海道の産品が集積する場として日本一だと自負しています」