まちに流れる湧水の基
札幌は豊平川の扇状地のうえに形成された都市です。豊平川の水はこの地を潤し、支流を作り、さらにかつては「メム」という湧水を多くの場所に作りだしていました。メムはアイヌ語で「泉の湧き出るところ」と言われています。北海道には「メム」という名がつく地名が今も各地にあります。
豊平川は札幌の水脈です。そして、豊平川の岸辺から離れた場所にもメムとして、その水脈の豊かさを表出させます。
こうしたことは大地と川の関係だけではないのではないか。いま札幌で展開されている多様な人々の活動も、大小さまざまな水脈から湧き出たメムと表現することもできるのではないか。そのメムがまた遠く離れた場所に次のメムを生む水脈となっていくのではないか。
いろいろな連鎖はごく当たり前のことである一方、普段はあまり意識しないことなのかもしれない―そうした思いを下敷きにした特集です。
新型コロナウィルスの影響でしばらく特集を休止していましたが、少しずつ再開していきます。
伊田行孝─text