三井不動産は、実は「北海道の森の会社」でもあります。道内に所有する森林は31市町村に広がり、総面積は5000ha弱。北海道の森林総面積(約560万ha)のおよそ1000分の1となっています。これらの森林はいくつかのご縁によって保有することになったのですが、その最大の目的は地球環境への貢献です。あわせて、社員の環境意識の向上にも寄与すると考えてのものでした。
保有林の総面積の内訳は人工林が62%、天然林が36%となっており(未立木地2%)、人工林は施業を通じて適正に管理され、天然林は自然のまま保全されています。
三井不動産が保有する森林が1年間に吸収・固定する二酸化炭素量は約2万1000トンで、一般的な家庭が1年間に排出する二酸化炭素量(約3730㎏)の約5630世帯分に相当します。
人工林から得られる木材(保有林材)は、三井不動産やグループ会社で展開しているオフィスビルやマンションの構造材や内装材、オリジナルフローリング材「スマートフローリング」、商業施設や物流施設の共用部のファニチャーに活用され、間伐材も環境への取り組みをテーマにするイベントで配布するノベルティ、使用する木育玩具などに利活用されています。
その人工林の1つが美瑛町にあります。ここでは2008年から毎年(2020・21年はコロナで中止)、北海道内外の三井不動産やグループ会社の若手を中心とした社員が参加して森林の「環境研修(施業活動)」が実施されています。これは「植える」「育てる」「使う」というサイクルを体験するとともに、森林の持つ地球温暖化の緩和や生態系の保全、防災などの機能とそれを育む森林管理の重要性を理解し、企業としての環境意識を高めることを目的とした活動です。コンセプトは“終わらない森”創り。
今年も10月19日・20日に、東京や札幌から約30名の社員が参加し、植林活動のほか、林産試験場、森林組合の製材所、富良野自然塾などの視察と座学を実施しました。
植林活動には、三井不動産がTEAM JAPANゴールド街づくりパートナーとして支援している日本オリンピック委員会(JOC)アスリート委員と、冬季産業再生機構のオリンピアン6名が参加しました。
参加者からは
・次の世代のために地球環境を保全していく重要性がよくわかった。
・“終わらない森”創りの内容が理解できた。
・植えた木が成木になるのは次の世代のこと。自分の世代だけではなく、次の世代のことも考えて行動しなければならないと思った。
・将来、自分が植えた木がどう成長しているのか是非見てみたい。
・日本の林業が置かれている状況、林業の現場の大変さがよく分かった。
といった声がありました。
また、以前に参加した社員は子どもに手紙をしたため、「小さな苗木が成木になった姿を自分は見ることができないだろう。いつの日か大人になった君が成長した木を見に行き、地球の環境について考えてほしい」と伝えたこともあったそうです。
いま、地球温暖化や生物多様性、SDGsといった地球環境に関するキーワードを目にしない日はありません。また、木材の輸入自由化によって国産材の価格が低迷し、林業離れによる人手不足や林業就業者の高齢化も進んでいます。そのため、伐期を迎えた多くの人工林が放置されているのが現状です。伐期を迎えている高齢の木は、若い木に比べてCO2の吸収・固定量が減少しており、この点からも、皆伐、再造林の推進が課題になっているのです。
そのため、三井不動産では森林組合と連携して、伐期を迎えている森を皆伐し、再造林していくことを目指しています。一方で、伐採するためには、その材が有効に利用されることが重要で、そのためにグループ内での木材利用を推進しています。
地球規模での環境保全はもちろん、豊かな北海道を守っていくためにも、こうした“終わらない森”創りを広げ、継続していくことが求められています。