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南二条通りにつながる通路。菓子や缶詰、海産物が所狭しと並ぶ
南二条通りにつながる通路。菓子や缶詰、海産物が所狭しと並ぶ
二条市場の鮮魚店「池田商店」店主・池田訓久さんの朝は早い。
午前3時に起床し、午前4時半には札幌市中央卸売市場へ。「これぞ」と見定めた魚介を競り落とし、午前8時ごろには店頭に並べていく。
30代のとき、父から店を継いだ池田さん。定休日はなく、「店の休みは宝くじに当たるようなもの」と笑う
「池田商店」の池田さんは、10代から魚の卸売に携わり、この道40年のベテラン。
「今日はハタハタとマガレイがあるよ」。自分で目利きしているから、売り言葉にも熱が入る。要望に合わせてさばいたり、調理法を説明したりするのも、お手の物だそう。「といっても、やっぱり基本は煮るか、焼くか。手の込んだメニューは自分で考えてね」。笑いながら話すうち、「この魚を食べてみたい」「この人から買いたい」と思えてくるから、不思議なものだ。きっと、対面販売の楽しさだろう。
「魚が売れるのが一番嬉しい」と話す池田さん。根っからの“魚屋魂”を感じた
ちなみにこのとき、買い手として気をつけたいのは、値段だけで判断しないこと。
「スーパーより高い、と見向きされないことも多いんだ。品質は全然違うんだけどさ…」と悔しがる声を、あちこちで聞いた。実際に買い、食べた私が言えること。本当に違う! 観光スポットだから、と敬遠していた自分を反省。こんな身近な場所に、市場があることの幸せをかみ締めたい。
創成東エリアを「札幌の下町」とするならば、二条市場はその象徴のような外観をしている。
年季の入ったアーケード屋根。個人商店のひしめき。路地裏のような細い通路。
昭和から変わらぬ佇まいだと知り、「味があるなぁ」と惚れ惚れしていたら、なんと一時期、ビル化しようという案があったというから驚いた。
古めかしい壁がレトロ感を醸し出す。かつては店舗の二階に住んでいる人も多かったそう
二条市場の今昔を見つめてきた、裸電球の光
佐々木さんは九州生まれ。20歳のときに北海道に移住し、縁あって二条市場に勤めた珍しい経歴の持ち主
激変する街並みの中で、二条市場はどうなるのだろう。どうお考えですか、佐々木理事長。
「とりあえず、現状維持だねぇ」との返答に、なんだか力が抜ける。
でも、そうか、このままでいいんだ。
これまでも、二条市場はしたたかに、賢く、変わり続けてきたではないか。
変幻自在。不易流行。どんなに時代が変わっても、二条市場はどっこい、ここに在り続けるだろう。
一見頑固そうに見えて、もしかすると、どこよりも大らかに、街と、人の変化を受け入れる度量があるのかもしれない。
だから、いつでも気楽に、誰とでもご一緒に。二条市場で、待ち合わせよう。