ふだんは下川町に住む富永紘光さん。森の仕事の先輩である陣内雄さん、足立成亮さんと1ヵ月間、森林整備の仕事をすることになった。森には詳しい富永さんも、チェーンソーで間伐をしたり、森のなかに作業道をつくったりするのは初めての経験だ。
「とにかく毎日が修業です」
はじめの数日は自分がどう動けばいいのかまったくわからなかったという。そこで、まず先輩二人をよくよく見ることから始めた。そして「この作業にはどんな意味があるのか、次に何をしようとしているのか、そこで自分にできることは何か」を考えていくと、身体が少しずつ自然に動くようになってきた。
足立さんがパワーショベルを操るときは、前方のじゃまになりそうなクマザサや枝を払い、立木を伐倒・採材する。陣内さんがカラマツを間伐するときは、どの方角に倒すのかを見極め、木がドシーンと倒れるのを見守ってから、すぐにチェーンソーで切り分けていく(伐った木は、そのあと何に使うかに合わせて現場で切断しておくことが多いのだ)。不要となる横枝もきれいに落とすと、さっきまで立っていた「樹木」が見る間に「木材」に変わった。
森のなかでは、それぞれが別に動きながらすべてがなめらかにつながっている。わざわざ声をかけなくても、何をしたいのか、してほしいのか、お互いがちゃんとわかっている。遠くに離れていても、あうんの呼吸で作業は進む。その流れるような仕事ぶりは、静かで何とも格好がいい。
富永さんは言う。
「僕はこれから『薪屋』としてやっていきますが、できるだけ森に近いスタンスでいたいので、この現場は本当に勉強になりました。技術の修得ももちろんですが、二人の森に対する接し方、いつも100年後の森を見て、今の森と向き合う姿勢にすごく共感します。今後もゆるやかなネットワークを保ちながら、一緒に仕事ができたらと思います」
「薪屋とみなが」から届く薪は、ストーブであかあかと燃えて私たちを暖めるだけでなく、森への入口に私たちを誘ってくれる。その背後にどれほどの時間が流れ、どれほど多様な空間が広がっているかを想像しながら、その恵みを受け取りたいと思う。そして、彼のこれからの活動を楽しみに、またいつか「よかったら見に来ませんか?」と電話がくるのを待ちたいと思う。
■薪屋とみなが
薪ストーブをはじめとする燃料用やカフェ・レストランなどお店のディスプレイ用に割った薪、玉薪(丸太を短くカットした材)、焚付ガンビ(カバの樹皮)を販売。主に下川町から40km圏内(名寄市、美深町、士別市など)に配達。当圏外もご要望により対応可能。
北海道上川郡下川町上名寄2958
TEL:080-5264-0081
E-mail: order.makiya●gmail.com ※●を@に置き換えてください
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■Out woods
「北海道の森のほとりで働く、生活する、遊ぶ」をコンセプトに森林作業道開設、間伐、丸太生産、里山の整備、地域と森の環境づくり、薪の販売などを行う。足立さんが代表で陣内さんと一緒に活動することも多く、「林業」から「森遊び」までを幅広く提案、実現する。
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■一般財団法人 北海道札幌南高等学校林
札幌南高学校林は1911(明治44)年に皇太子が北海道行啓の際、札幌中学校(のちの札幌南校)に来校されたことを記念して植林を始めた森。当時の校長、山田幸太郎氏の「造林育人」という理念に基づき、100年以上に渡って南高生・同窓会が守り育てている。
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