プロローグ
北海道固有の民俗芸能といえばアイヌの人々による古式舞踊が思い起こされますが、今回は、和人が母村から持ち込んだ民俗芸能、あるいは移住後にその土地で生まれた民俗芸能をご紹介します。
2022/08/03
北海道の民俗芸能にはアイヌによる固有の芸能と和人による移植の芸能がある。和人によるものでも、母村-移住村との単系的な移植の芸能ばかりではなく、分布に地域的な共通性が見いだせるものや集落の歴史が反映されているものなど多様な特性を持っている。
2022/08/03
札幌市東区の丘珠地区には、住宅地の間に玉ねぎ畑が広がっている。明治初めから玉ねぎ栽培が続くこの土地で、同じく明治から130年続く「丘珠獅子舞」。勇壮な舞と笛の音色は富山県にルーツをもつ。どんな人たちが今につないできたのだろう。
2022/08/10
北緯45度。アイヌ語の「リイ・シリ (高い・山・島)」が端的に表すように、利尻島とは利尻山(1721メートル)そのものだ。太古から人々は、この山を目標に長い旅を繰り返してきた。特段にユニークな獅子舞神楽である麒麟獅子をめぐる史実は、そのことの意味をあらためて考えさせる。
2022/08/17
利尻島仙法志長浜で、誰からも忘れられていた謎の獅子頭。その発見が起点となって人々は動き出し、麒麟獅子は2004(平成16)年、一世紀近い忘却の淵から復活の舞を遂げた。それは利尻と鳥取にとって、思いがけない出会いと繋がりが広がる、新たな歴史のはじまりとなった。
2022/08/24
利尻麒麟獅子の復活をめぐるかずかずの挿話は、かつてこの島をめざした移民たちの思いや生き方を描くことにもつながっている。再生に果たした利尻町立博物館の関わりからも目が離せない。高齢化や人口減などさまざまな課題を抱える地域の中で、麒麟獅子はいま何を見すえているだろう。
2022/08/31
北海道が指定する無形民俗文化財9件のうち6件が江差町にある。江差沖揚音頭、五勝手鹿子舞、江差追分、江差三下り(さんさがり)、江差餅つき囃子、姥神大神宮渡御祭。集落に伝わる芸能が長い時間を超え、すたれることなく受け継がれてきた理由とは——。
2022/09/07
五穀豊穣や大漁、無病息災の祈願。獅子舞には人々の豊かな暮らしへの希望が込められている。獅子という伝統的な霊獣によってもたらされる明るい喜びと一線を画すのが、実在した羆(ヒグマ)を題材に、現代の地域の人々によって創作された「苫前くま獅子舞」である。
2022/09/14
江戸時代のスーパースター、令和の今もテレビや映画に引っ張りだこの歌舞伎役者。別世界の話かと思えば、実は日本全国、もちろん北海道各地にも“歌舞伎役者さん”がいたことをご存じですか。そう、「地(農村)歌舞伎」と呼ばれる素人芝居のこと。その一つ、札幌に伝わる篠路歌舞伎の物語。
2022/09/21
東西東西!「花岡義信」こと大沼三四郎が率いた篠路歌舞伎は消滅し、幻の存在に。が、噂が噂を呼び、住民が一夜限りで復活させたのが1985年、一座の解散から実に51年後のことでした。さてこれからどうなるか。驚きに次ぐ新展開。隅から隅までずずずいーっとご拝読願上げ奉ります。
2022/09/28
移り変わる社会の中で、伝統文化の継承は厳しくある。そして、文化活動を“不要不急”の立場に追いやった世界規模の疫病が、古平町最大の祭り「天狗の火渡り」にも影響を及ぼした。町と人、距離や世代を超えて、長く、深くつながるこの祭りを守る人たちがいる。
2022/10/05
道南には「奴」と呼ばれる伝統芸能が多くみられる。たとえば、松前町の月島奴振り、北斗市の上磯奴、鹿部町の大岩奴ッ子振りなど。日本海に面した八雲町熊石は、相沼奴(あいぬまやっこ)。160年以上続く芸能は、ときを超えてこの土地に暮らす人たちをつないでいる。
2022/10/12
道南に「松前神楽」を20年近くにわたって追いかけるカメラマンがいます。ニシンとともに北上した神楽が実は内陸にも伝承されていました。「神楽を見ることで、その地の風土、歴史、文化が伝わってくる」―ファインダーのその先に見える松前神楽の魅力とは。
2022/10/26
サイドストーリー
かつて本マガジンの特集「まちを織る」のサイドストーリーで、幕末の北方警固のために生まれた日本海沿岸のまちを取り上げたことがある。もうひとつのブームタウンと題したものだ。北海道の民俗芸能にちなんで利尻島を訪れた延長で、この島を舞台にした北方警固についてもスケッチしてみたい...
2022/11/02