プロローグ

まちに流れる湧水の基

いま札幌で展開されている多様な人々の活動は大小さまざまな水脈から湧き出たメムと表現することもできるのではないか。そのメムがまた遠く離れた場所に次のメムを生む水脈となっていくのではないか―そうした思いを下敷きにした特集です。

2020/12/09

水のまち札幌と白野夏雲

コロナ禍が、世界を深みから変容させている。社会のすみずみにITが浸透するデジタル・トランスフォーメーションの加速にとどまらず、私たちはこの災いを、のちに文明の転換と呼ぶかもしれない。道都の成り立ちを、「水脈」というキーワードから考え直してみたい。

2020/12/09

思考し続ける建築~その1

五十嵐淳さんは佐呂間と札幌を拠点に、住宅を中心とした設計を続ける建築家。北海道の環境を読み解きながら、風や光を自在に取り込み、豊かで独自の空間を生み出す作品はもとより、その思想や活動に共感するという酒井秀治さん。お二人が建築、環境、風景などについて語り合ってくれた。

2020/12/23

思考し続ける建築~その2

五十嵐さんは「北海道らしさ」や「風土」に対し、どう向き合っているのだろう。自分には系譜がないという五十嵐さんだが、これまで多くの建築家にあこがれ、これからの人材にきっかけをつくり、常に思考しながら進み続ける。ここにも確かな水脈があると思った。

2020/12/30

札幌から発信する北海道の日本画 〜本間莞彩から現代へ

「北海道には日本画が育たない」と言われていた昭和初期、札幌で北海道の日本画を追求した本間莞彩(かんさい)。2013年から、おもに札幌を拠点とする作家らによって始まった、日本画の表現を模索する「鼓動する日本画」の活動。時を経てつながる水の流れをたどってみよう。

2021/01/13

映画の!をまちなかで

札幌市時計台など、意外な場所で多彩な映画を上映する北海道札幌市の自主上映グループ「キノマド」。代表の田口亮さんは、札幌のミニシアター「シアターキノ」から大きな刺激を受けてきたという。“自宅とも映画館とも違う映画体験”にこだわり、活動の幅を広げる田口さんの思いとは。

2021/01/20

札幌のまちと、アートの“今”が出会う場へ

札幌駅の東、苗穂エリアに位置する「なえぼのアートスタジオ」は、札幌を拠点とする現代美術家が集まるシェアスタジオ。制作にとどまらず、まちとアートが出会う場としてアーティスト自身が運営し活動を行うユニークな空間だ。苗穂から、札幌のアートシーンに新たな水脈が生まれつつある。

2021/01/27

日本のモノづくりを支える心

明治期、北海道工業の原点となった開拓使工業局の器械場や多くの官営工場が生まれた札幌の創成川の東で、その大きな水脈から湧き出でて、現代の日本のモノづくりを支え続ける会社がある。これも私たちが誇るべきメムの一つ。その誕生から現在までの歩みをお聞きした。

2021/02/03

サイドストーリー:内地からのまなざし

1884年、道庁設置前夜と安場保和の旅

1882(明治15)年、開拓事業の最初の10年計画が終了すると、政局の動乱の中で開拓使は廃止される。このあと3つの県に分割された北海道の開拓は、停滞の淵にあった。再起動のためにいくつかの巡視団がやってきたが、その中に、のちに北海道庁長官を務める安場保和がいた。

2021/02/03

資本と教会から見た道都の世紀末

前回取り上げた元老院議官安場保和(やすばやすかず)は、1897(明治30)年の秋に第6代北海道庁長官に就任する。おりしも日本の資本主義経済が本格的に立ち上がった時代。明治30年前後の札幌を、開拓事業と外国人宗教者の目からスケッチしてみよう。

2021/02/10

安場保和、北千島へ

千島列島最東北端の占守(シムシュ)島。根室から直線距離で約1200kmも離れたこの国境の島は、アジア太平洋戦争最終盤にソ連との戦闘が繰り広げられたことでも知られる。今回取り上げるのは、1884(明治17)年の夏、明治政府がアイヌに強いた色丹(シコタン)島への強制移住だ。

2021/02/24

水脈から考える石狩平野

和人が出会うはるか前から、北海道の水の背骨である石狩川は無数の氾濫を繰り返してきた。第6代道庁長官安場保和と、ロシア正教会のセルギイ掌院。内地からのふたりのまなざしを通して道都と北海道を映してきたサイドストーリーだが、この水系と人間の営みの交わりをめぐって終幕しよう。

2021/03/03

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