プロローグ

「記憶のバトン」をつなげるために

人が生きるために産業は不可欠です。だから、その遺産はあらゆる場に存在しています。まちの営みを支えた産業には、ここに生きた人々の記憶と、今を生きる人々にとっての新しい発見があるはず。産業遺産は、次代を担う子どもたちに記憶のバトンをつなげる旅の手掛かりです。

2019/10/30

いま、なぜ、産業遺産なのか

私たちの生活は様々な技術や労働、暮らしの積み重ねの上にある。産業遺産はそうした現在の社会の輪郭を伝え、未来を考える機会を与えてくれる。それは地域アイデンティティを確認していく営みでもある。一方で、産業遺産を伝え、学ぶ視点は多面的で、難しさと面白さを有している。

2019/10/30

若手研究者オススメの北海道産業遺産5選

本特集の入口にあたる稿を寄せていただいた産業遺産の若手研究者・平井健文氏に、いま行くべき・見るべき北海道の産業遺産を、その理由や背景を含めて5つ選んでもらいました。中には「いま行かねば間に合わないかもしれない」ものもあります。ぜひ、現場へ!

2019/10/30

炭鉱遺産に観る、近代北海道の姿

2019年5月、文化庁が認定する日本遺産となった「炭鉄港(たんてつこう)」は、全国のリストのなかで少々異彩を放っている。何百年も積み重なった歴史や偉人の功績といったものではなく、一瞬の繁栄を極めて衰退した炭鉱遺産が中心となっているからだ。

2019/11/06

私が炭鉱遺産を撮り続けるワケ~移住を決意させた被写体としての魅力

愛知県出身の東京育ちで炭鉱や石炭とは縁の無い生活を送っていた私が、旅の最中に出会った北海道の炭鉱遺産によって人生を大きく変えることとなった。廃墟的な寂しさではなく、人の手を離れた産業構造物が自然に還る、融合していく姿の美しさを表現したいと思うようになったのだ。

2019/11/13

元炭鉱マンが語る旧住友赤平炭鉱の記憶

炭鉱跡をいくら見つめても、そこから石炭が運び出される風景を再び見ることは叶わない。けれど想像はできる。手掛かりは、記録や写真、道具や建物だ。さらに、語り部となる「人」がいれば、知見はもっと深まるだろう。赤平で炭鉱遺産ガイドを務める元炭鉱マンに会いに行った。

2019/11/20

札幌の基盤となった大友堀を照らして

札幌のまちを東西に分ける創成川。そのもとになった「大友堀」が完成したのは、明治が幕を開ける2年前のこと。長さ4kmにわたる用水路を4カ月で掘りあげ、橋や道路をつくり、畑をひらき、まちの礎を築いた大友亀太郎の足跡を訪ねた。

2019/11/27

コンクリートに着目した、函館の新しい観光振興

函館で「コンクリート文化」が新たな観光資源として注目を集めている。江戸末期に国際貿易港として発展した函館は、いち早くコンクリートによるインフラ整備が始まった都市のひとつ。当時の建造物が現存していることに目を付けた市民団体により、新しい切り口の観光誘致がスタートしている。

2019/12/25

開拓を支えた小さな鉄路・簡易軌道

2018年、「北海道の簡易軌道〜次世代に伝える開拓遺産としての鉄路〜」が北海道遺産の一つに選定された。戦前・戦中は「殖民軌道」ともよばれたこの小さな鉄路は、北海道、特に東部と北部の開拓にとってはとてつもなく大きな存在だった。半世紀前に姿を消した簡易軌道の功績に今、スポッ...

2020/01/15

島の歴史と産業をまるごと「エコミュージアム」に

遺跡や遺構、モノなど北の島には貴重な遺産が多く遺されている。島の営みの記憶も人々の口から聞くことができる。「フェノロジーカレンダー」の制作や「利尻しまじゅうエコミュージアム」の取組みが利尻島でスタートしている。

2020/01/29

サイドストーリー:産業遺産への白地図

地貌を読み解くレッスン

その土地にどんな人が暮らし、どんな営みがあったのか。土地の風土が何を生み出し、それが現在の何と結ばれているのか—。産業の歩みを入り口にすると、風雪にきたえられたまちの素顔が見えてくる。産業遺産を歩くための準備を考えてみよう。

2019/12/04

記録と記憶の境界を耕す

産業遺産の森に分け入ると、モノや映像や文字だけでは捉えきれない地域史が見えてくる。そこから人はどう進めば良いのだろう。手がかりは、語りや言い伝え、民話、伝説—。それぞれに定義の輪郭が微妙にずれていくこうした伝承の、重なりの部分のことを考えてみたい。

2019/12/18

未来として開く「失われたもの」

「日本のホープ」と持ち上げられた戦後の北海道。そして、人口減などでゆっくりと衰退するこの国の代表のようにも見える現在の北海道。こんな時代であればこそ地域には、自らの過去から未来を掘り出していく知恵が求められているはずだ。失われたものたちへのまなざしを鍛えよう。

2020/01/08

地域史の新しい旅へ

蝦夷地を北海道へと変容させていった開拓事業は、産業革命がもたらしたさまざまな思想と技術によって展開されてきた。その痕跡をたどることは、地域の素顔を新たな手法で描き出していくことに直結するだろう。風土という空間を旅しながら、歴史を歩いてみよう。

2020/01/22

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