プロローグ
北海道平取町を貫く沙流川は長い時間、人々の暮らしを支えてきました。その中流域にある二風谷地区ではアイヌ文化が脈々と受け継がれてきました。アイヌの歴史と文化は北海道が誇る宝物です。「二風谷コタン」から歩きはじめる特集が始まります。
2020/02/12
経産省認定「伝統的工芸品」は235品目。北海道では唯一「二風谷イタ」と「二風谷アットウシ」が認定されている。それはアイヌの伝統的な生活具が今もここで造られている証左でもある。二風谷コタンの旅を「イタ」から始めよう。
2020/02/12
「二風谷イタ」と並んで伝統的工芸品となった「二風谷アットウシ」。オヒョウ等の内皮から作った糸で織るアットウシの風合いは独特で、水にも強く通気性にすぐれている。
2020/02/19
二風谷アイヌ文化博物館でたくさんの展示品を見たあと、外に出て周囲を見渡すと、さっきとは別の空間に足を踏み入れた気分になる。広場には9棟のチセが建ち、それらを巡る小道があり、周りを木々が取り囲む。ヨシでおおわれたチセに入ると、さらに世界が広がった。
2020/02/26
アイヌの神話では、シシリムカ(沙流川)の岸辺にカムイが降り立ち、人々に生活道具の作り方や文化を教えたとされる。二風谷の沙流川の地の博物館には、カムイから授けられた民具の世界が広がっている。
2020/03/04
平取町を訪れたなら、この土地ならではの食も楽しみたい。「ニシパの恋人」の名で知られるトマトや「びらとり和牛」など食材は豊富で、それらを育む農村景観は町の大切な財産だ。アイヌ文化だけではない町の魅力について、地元飲食店で作る「びらとり地産地消の会」の山口尚之代表に聞いた。
2020/03/18
経産省の伝統的工芸品に北海道で初めて選ばれた「二風谷イタ」と「二風谷アットゥシ」。数あるアイヌの工芸品のなかで、この二つが指定を受けたのはなぜなのか。平取町アイヌ文化情報センター内の二風谷工芸館を訪ねてみた。
2020/04/01
【短期集中連載】イザベラ・バードはなぜ平取を目指したのか
今から142年前、日本に7カ月滞在した英国人女性が最初に目指したのは平取でした。イザベラ・バード研究の第一人者が、日本の旅と旅行記の真実を解き明かす中で北海道の旅と平取訪問を位置づける短期集中連載です。1回目は誤解の原点と6期にわたった旅の軌跡についてです。
2020/05/06
イザベラ・バードが北海道から東京へ戻った後、関西にも旅をしている事実はあまり知られていません。そして、「日本奥地紀行」として定着したタイトルの本当の意味、原著の副題にある“interior”とは? イザベラ・バード研究の第一人者が、日本の旅と旅行記の真実を解き明かします...
2020/05/13
総日数101日に及んだイザベラ・バードの北海道への旅。そこには3つの目的がありました。アイヌ・函館・キリスト教・蝦夷(北海道)の自然や風景やそこに暮らす人々等、いくつものキーワードに彩られた、稀代の旅行家の北海道の旅の真実を『完訳 日本奥地紀行』の訳注者が解き明かしてい...
2020/05/20
イザベラ・バードの平取滞在と調査―成果の意義とそれを知るために
イザベラ・バードが実り多い平取での調査を成し得たのは周囲の周到な準備と支え、従者兼通訳伊藤の働きがあってのものでした。長老からの聞き取りや人々の行動観察など、バードが日本の旅のクライマックスと位置づけた平取での3泊4日を『完訳 日本奥地紀行』の訳注者が解き明かします。
2020/05/27
5回にわたる特集内連載の最終回。イザベラ・バードが滞在したペンリウクのチセはどこにあったのか、そして142年前の日本の旅を、これからに活かしていくにはどうすればよいのかなど、平取調査とその記録の意義を今と未来に生かしていく途について、考察します。
2020/06/24
サイドストーリー:厚真から北海道が見える
北海道では人とモノの太古のルートとして、石狩低地帯の水系を使った日本海と太平洋を結ぶ勇払越えが知られている。しかし近年、その勇払に接しながら内陸北東へ向かう厚真からの道も注目を集めている。本州と北海道を結び、環オホーツクへと延びる北方史のラインを意識してみたい。
2020/03/11
今日一般に語られる和人を主語にした北海道の歴史は、道南の和人勢力とアイヌ民族が激しく戦ったコシャマインの戦い(1457年)の前後から始められることが多い。しかし厚真の地に立てば、松前藩成立に直結するそうした史実とは異なる歴史の文脈が見えてくる。
2020/03/25
歴史好きがいる一方で、まったく関心のない人も少なくない。歴史は嫌いだったと、高校時代を思い出す人もいるだろう。いま生きている現場で、歴史は何の役に立つのだろう。厚真から北方の古代史を大きく俯瞰することで、「ふつうの人々」と歴史との関わりをめぐって考えてみたい。
2020/04/08
大陸側から日本海を見ると、日本史の風景が一変するだろう。内海としての日本海につながったオホーツク海を含めれば、巨大なアムール川の存在と、南北を往来する人々の動きが、千年のスケールで想像できるような気がする。北海道を、境界と接触の領域に浮かぶ島として位置づけてみよう。
2020/04/15
厚真川をさかのぼると、山越えで富良野盆地に入ることができ、東へ分水嶺を越えて行けば、二風谷のある沙流川流域へも抜けられる。近代以前のこの地の人々にとって、それは常識的な交通だっただろう。時間のスケールを拡張すれば、厚真の地から、新たな北海道の風景が見えてくる。
2020/04/29