
(提供:テラス計画)
赤れんが テラス3階の北側に、ひっそりと佇むエレベーターがあることをご存じでしょうか。3階と5階とをつなぐそのエレベーターの扉上部には「眺望ギャラリー専用エレベーター」と記されています。5階でドアがひらくと廊下や通路ではなく「空間」が。ここは赤れんが テラスが完成したときには、西の正面に赤れんが庁舎を、東に北3条通を、そして眼下にアカプラ(札幌市北3条広場)を望む、まさに眺望を楽しむためのスペースとして設けられました。また、札幌が全国のまちとつながっていくための情報のひとつとして、様々なまちや地域のイベントや展覧会のリーフレットなどが並ぶスペースでした。そこから10年が過ぎましたが、いまも“新しい文化やアイデアが生まれるよう、異なる価値観が出会う場を作り、イノベーションを促進する活動を目指し”続ける場となっています。その名は「テラス計画」。

3階の専用エレベーター

西側正面に赤れんが庁舎を望む
「テラス計画」にはちょっとした前日譚があります。
1972年の札幌オリンピック前後に建設されたビルが多い札幌駅前通地区では、赤れんが テラスが竣工する数年前から建替検討の時期を迎えはじめていました。建替のための解体等で札幌駅〜大通という目抜き通りの賑わいが失われることが懸念される中で、今の赤れんが テラスの向かいにあった越山ビルで「越山計画」なるプロジェクトが動き始めました。札幌のアーティストやデザイナー、まちづくり関係者など、いろいろな人たちが集まり、知恵を出し合って、「カフェ・ギャラリー・フリースペース」として人々が出入りする空間を生もうというものでした。計画からリノベーション、企画・運営まで発案者や参加者たちの手作りで準備、実施され、2013年7月から同年12月というわずか半年ほどの活動期間でしたが、この間にアート系の展覧会を4回、イベントはじつに65回も開催されました。越山ビルの解体スケジュールなどから幕を閉じたプロジェクトでしたが、その翌年8月に赤れんが テラスが誕生しました。そして、その5階にある空間は「越山計画」のイズムを引き継ぐ『眺望ギャラリー』として誕生したのです。運営を担うのは、札幌駅前通まちづくり株式会社。「越山計画」の発案・実施も同社です。そして、その活動を見ていた三井不動産が眺望ギャラリーの運営に関してお声がけさせていただき、テラス計画と名付けられました。

テラス計画の前身ともいえる「越山計画」の活動風景(提供:札幌駅前通まちづくり株式会社)
現在、テラス計画の目的は「まちづくり企画実施×アート企画実施=街の居場所づくり・コミュニティの形成」であり、主な活動は次の3つです。
- 展覧会&イベントの実施:まちづくりとアートの情報発信・拠点づくり
- コミュニティ活動の推進:人や情報が集まり、交流が生まれる場づくり
- 都心部の快適な環境の提供(レンタル運営):様々なまちづくり活動を生み出す環境づくり
年間に6~8本の展覧会やイベント、ワークショップなどの企画が実施され、多様な人の交流の場となるほか、ユニークなコミュニティ活動としては「まちのデザイン部」という、まちをテーマにした大人の部活動があります。
例えば、都心の駐輪禁止エリアのサインをより美しいものにしたいと取組み、実験的に採用された事例などは、社会と市民の思いをつなぐ活動ともなっています。

札幌都心部の社会実験で採用された駐輪禁止エリアのサイン(提供:札幌駅前通まちづくり株式会社)

「まちのデザイン部」の一コマ(提供:テラス計画)
また、アートとまちづくりを学ぶ場としての「シンクスクール」、小学2年生から中学3年生までを対象としたアートスクール「シンクスクールジュニア」も実施され、それぞれの思いを形にし続けています。
札幌駅前通まちづくり株式会社の経営・企画グループで、テラス計画を担当する今村育子さんは「10年経過したので、今後のビジョンも見つめなおす時期に来ています。いま考えているのは、情報やネットワークの“シェア”ができるような企画を考えています。このエリアの仕事・買物・飲食という機能に加え、新しい都心の価値を創造できる場にしていくことを目指しています」といいます。
同じく担当者の柴田未江さんは「10年前にこうした場を設けたというのは、本当に先駆的な取り組みだったと思います。2025年7月には赤れんが庁舎がリニューアルオープンします。その眺望をここから楽しんでいただき、合わせてアートやまちづくりの入口に立ち寄っていただければ本当にうれしいですね」とお話ししてくださいました。

「テラス計画」を担当するメンバー。札幌駅前通まちづくり株式会社の今村育子さん(中央)、柴田未江さん(右)とテラス計画で働く(一社)PROJECTAの矢倉あゆみさん(左)
明治期、全国から人々が集まり、出会い、交流した北3条通。赤れんが庁舎を起点にしたこの通りを望む『眺望ギャラリー テラス計画』は今もまた、イノベーションの場として機能しています。とはいえ、難しく考えることなく、まずは気軽に赤れんが テラス3階のエレベーターのボタンをポチッと押してみてください。
テラス計画
北海道札幌市中央区北2条西4丁目1番地
赤れんが テラス5階(3階から専用エレベーター利用)
11:00~19:00(変更あり)
TEL: 011-221-4366
(「テラス計画」の詳しい活動は下記から)
https://www.terracekeikaku.com/